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加速器研究施設トピックス 2010/09/15

〜台湾放射光施設TPSの蓄積リングにKEKB超伝導空洞の採用が決定〜

台湾放射光研究センター(NSRRC)は既存の放射光施設(TLS: Taiwan Light Source)に併設する3GeVの第3世代放射光施設(TPS: Taiwan Photon Source)の建設を開始した。その電子蓄積リングの高周波加速にKEKB型超伝導加速空洞の採用を決め、本年5月に三菱重工業株式会社と3台の空洞製造契約を取り交わした。2012年の完成納入を予定している。TPSは既存のTLSに隣接して建設される第3世代放射光施設であり、3GeV、最大500mAの電子ビーム蓄積を目指す<図1>。バンチ長は3mmである。このような第3世代放射光施設には多数の挿入光源が設置されるため、その高周波加速には高い加速電圧によるCW(continuous wave)運転(注1)と共に、蓄積ビームへは数百kW級の大電力供給が要求される。さらにビーム自身が加速空洞内に励起する強力な有害高調波を極限まで抑える機能が必要である。

注1)CW運転 高周波は交流であるためその連続的な運転は、直流(DC)による連続運転と区別して、連続波(CW: continuous wave)運転と呼ばれる。

fig1
<図1> 台湾国立放射光研究センター鳥瞰図(by courtesy of NSRRC)

近年、超伝導空洞はCWの高い電圧が供給できることから中規模の蓄積リングでの応用が発展し、世界中の放射光施設で既に利用されている。これらは高調波減衰型超伝導空洞と呼ばれ、現在は米国・コーネル大学が開発したCESRB型(500 MHz)、KEKが開発したKEKB型(509 MHz, 500 MHz)、そしてCERNが開発したNb-Cu製SOLEIL型(352 MHz)がある。NSRRCは既存TLSの性能向上のために早くからCESRB型高調波減衰型超伝導空洞を導入し、これまでにその運転実績を積み重ねるだけでなく超伝導空洞技術そのものの獲得に努めてきた。一方、KEKは中国高能物理研究所とともに、BEPC-II加速器向けにKEKB型509 MHz空洞を基盤にした500 MHz空洞を開発し、期待通りの加速性能を実証している。
TPSに要求される高周波加速のパラメーターを<表1>に示す。NSRRCはTPSでも超伝導空洞を活用することを前提に綿密な検討を続けた結果、これらの運転条件に対応できる高周波加速装置として500 MHzのKEKB型超伝導空洞を選択した<図2>。その理由として、KEKBで稼働中の超伝導空洞が示す1.4 Aの蓄積電流下での350 kWの安定した電力供給能力、ビーム負荷に合わせて入力結合器の結合度が最適化できる機能などとともに、設置されている8台の空洞が示してきたこれまでの安定な運転実績や有害高調波の減衰性能、さらにはKEKとの技術交流などを評価したものである。
今後はKEKとNSRRCとの間で締結されたMoUに基づき、NSRRCはKEKが進める大電流対応型超伝導空洞の技術開発に参加するとともに、KEKはNSRRCの500 MHz空洞開発へ技術的支援を行ないながら両者の技術交流を深め、将来へ向けての互いの加速器技術の発展を目指すことになる。

<表1> TPS蓄積リングパラメーター

ビームエネルギー 3 – 3.3 GeV 高周波周波数 499.6 MHz
蓄積電流 400 mA (500mA max) 加速電圧 2.8 – 3.2 MV
エミッタンス 1.6 nmrad 供給電力 750 kW
リング周長 518 m 空洞台数 3
ハーモニック数 864 バンチ長 3 mm

fig2
<図2> KEKBトンネル内の高調波減衰型超伝導加速空洞

〜 記事提供 : 加速器第三研究系 古屋 貴章 氏 〜

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