加速器第六研究系技師の荒木 栄氏がKEK技術賞を受賞し、12月17日に表彰式が開催されました。
KEK技術賞は 「(1)技術への取り組みが創造的である。(2)技術の具体化への貢献、成果が顕著である。(3)KEKの推進する研究計画への技術貢献が顕著である。 (4)技術伝承への努力が積み重ねられている。」の4項目の基準で高評価を得た技術者に対して与えられるものです。受賞対象となったのは、「国際リニアコライダーのための低エミッタンス極小電子ビーム技術開発に必須な加速器アライメント技術開発に対する貢献」です。受賞発表会は、平成28年3月17日(木)13時から開催予定です。
先端加速器試験装置(ATF)では国際リニアコライダーに必要な先端加速器技術開発を進めています。ダンピングリング(DR)で低エミッタンス電子ビームを実現し、ATF2ビームラインで37ナノメートルの極小ビームの実現、ナノメートルでのビーム位置制御技術の確立を目指しています。このためには電磁石を数十µm 以下の高精度で設置することが求められます。
荒木氏のアライメント技術開発の成果が明確に現れたのは東日本大震災後のビームラインの復旧です。リニアック、ダンピングリング、ATF2ビームラインなど、ミリオーダーのズレが至るところにある状態から5月にはビームを再開出来る状態まで復帰(一次アライメント)させ、海外のリニアコライダー加速器研究者から驚きをもって賞賛されました。図1に一次アライメント(2011年5月)と、精密アライメント(2011年10月)の結果を示します。その後、ATF2ビームラインで世界最小垂直ビームサイズ44nmが達成されましたが、これも荒木氏が行った精密アライメントの貢献が大きいです。
図1: 震災後の一次アライメント(5月、±1mm程度)と精密アライメント(10月、緑色の部分)の結果
山内 正則KEK機構長(前列中央)と受賞者
受賞者:大畠 洋克氏(向かって左側)、荒木 栄氏(向かって右側)
平成27年度KEK技術賞 受賞者
荒木 栄氏(加速器研究施設・加速器第六研究系・技師)
大畠 洋克氏(共通基盤研究施設・超伝導低温工学センター・技師)
〜 文責 : 加速器第六研究系 道園 真一郎〜