Joint US-CERN-Japan-Russia International Accelerator School 2017 (http://www-conf.kek.jp/accschool17/index.html) は、“RF technology”をテーマに、平成29年10月16日より26日までの11日間にわたって、神奈川県三浦郡葉山町にある湘南国際村センター(写真1)で開催されました。湘南国際村センターは100名程度を収容できる国際会議場と宿泊施設を兼ね備えています。館内には十分な速度と容量の無線LANも常設されており、参加者への講義ファイル配布やスクールの運営にとても役立ちました。このスクールは、米国、CERN、日本およびロシアの各加速器スクールが合同で開催するもので、参加者と講師、スクールのスタッフが文字通り寝食を共にし(写真2)、加速器に関する知識を習得するのみに限らず、加速器の分野における世界的な交流を広めることを目的としています。今回のスクールは、2014年のアメリカ・カリフォルニアで開催された加速器スクールに続くもので、高エネルギー加速器研究機構、総合研究大学院大学ならびに高エネルギー加速器科学研究奨励会から援助をいただきました。校長はKEKシニアフェローの肥後壽泰氏です。
写真1 湘南国際村センター全景 |
写真2 湘南国際村センターでの朝食 |
今回のスクールには、大学・企業・研究所から約55名の受講者が出席し、講師陣22名による充実した講義を受けました(写真3)。受講者はアメリカ・CERN・アジアから、各数人のグラント枠を設けて優秀な学生を送ってもらうことができました。受講者の国籍とその人数を表1にまとめました。中国、ロシアからの受講者が多く、2カ国で全体の31%を占めています。受講者数は上記の2カ国にアメリカ、日本を加えると50%を占め、残り50%はアジア・ヨーロッパ等の各国からの参加者がバランス良く占めています。受講者は大学の修士課程にあたる学生から研究現場で実際にRFに携わる若手までで構成され、その年齢域は20代前半から30代後半までとなっていました。
表2にスクールの時間割を示します。10月24日はStudent Sessionに割り当てられ、希望者を募って参加者の研究内容などを紹介してもらいました。
写真3 授業風景 |
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表2に示した時間割のとおり、講義は8日間ありました。講義はRF関連の基礎的・応用的内容を取り扱う講義が21コマ各1時間30分、また最新のホットなトピックに焦点を当てた講義が5コマ各1時間設けられました。また、施設見学日を除く日の昼食後に講義内容について講師に直接質問できる「Q&Aセッション」が各1時間ずつ設けられ、参加者は講義中に生じた疑問などを講師に直接問いかける機会を得ました(写真4)。参加者の中にはこの時間を利用して実際の研究で直面している問題点について講師に相談する者も見受けられました。このような機会は参加者のみならず講師においても有益であったと思われます。
写真4 Q&Aセッション時の様子 |
講義は基本的な内容から最先端の内容までバラエティに富んでおり、講義によってはその場で理解するのは困難な内容も存在しましたが、熱意のある参加者が今後より専門的な知識を深めていくための良い導入になったのではないかと期待します。また第一線で活躍されている講師陣が、各々豊富な研究経験をもとに特色ある講義をされたため、参加者は非常に興味深く受講したのではないかと思います。
講義は加速器全体の概要説明に始まり、続いてRFの基礎、常伝導及び超伝導加速管、電子・陽子・イオン加速管、RFコンポーネント及び放電現象、低電力RF装置及び大電力源、荷電ビーム・RF計測など、RFに関連するトピックを網羅しています。講義資料はどなたでもウェブサイトからダウンロードできるので、興味のある方は是非ご覧になって下さい。
10月20日の金曜日は、鎌倉市への遠足を行いました。遠足前日までは雨の降り続く天気が続いていましたが、遠足の間はほとんど雨に降られることなく、スクール参加者および関係者の日頃の行いの良さを実感しました。遠足ではバス2台に分乗し、鎌倉大仏殿高徳院、長谷寺、鶴岡八幡宮を訪れました。遠足には語学ボランティアのグループで構成されるKSGG(神奈川善意通訳者の会)から計4人のガイドが同行して下さり、鎌倉及び各観光地について丁寧に説明して頂けました(写真5)。また、同行中は全体のスケジュール管理にも気を遣って頂き、ほぼ予定通りの行程をこなすことができました。遠足に参加した受講者・講師はガイドの丁寧な説明を受けながら、落ち着いた佇まいの長谷寺とその内部に安置された美しい十一面観音菩薩、高徳院に鎮座する巨大な大仏、鮮やかな朱色の鶴岡八幡宮とそれぞれ趣の異なる3つの名所を堪能しました。さらに、遠足の最後には小町通りでお土産を物色する余裕もあり、わずか数時間の遠足ながら充実した内容となりました。
期間中、遠足の日以外はほぼ毎日雨が降り続く湘南国際村センターでしたが、台風2号の通過した10月23日は雨も上がり青空の広がる素晴らしい一日となりました。この日の午後は講義もなく翌日のStudent Sessionの準備時間として割り当てられていたため余裕のある参加者はこの機を逃さず横浜や東京に繰り出していたようでした。また、スクール会場に残った熱心な参加者も夕焼けに輝く素晴らしい富士山を堪能することができ、ほぼ缶詰状態で酷使された心身をリラックスすることができました(写真6)。
湘南国際村センターでの講義の最終日にはビュッフェ形式のSpecial Dinnerが用意されました(写真7)。Special Dinnerでは、8日間に渡った講義を友に過ごした受講者と講師陣が夜遅くまで楽しい時間を過ごすことができました。
写真5 長谷寺でガイドの説明を聞く参加者 |
写真6 台風一過の日の夕方(湘南国際村センターからの富士山) |
写真7 講義最終日のSpecial Dinner |
一連の講義終了後の10月25日と26日には、加速器施設の見学を行いました。見学では10月25日にJ-PARCを、翌26日にはKEKつくばキャンパスを訪れました。湘南国際村センターから茨城県東海村にあるJ-PARCへの移動では、首都高速道路の渋滞により予定がー時間以上遅れましたが、KEK J-PARC広報セクションの方々及び関係者らの配慮により予定された見学箇所を全てまわることができました。
KEKつくばキャンパス見学では、入射器棟、KEKBトンネル、Belle検出器を訪問・見学しました。朝9時過ぎから12時前までこれら3カ所をじっくりと回ることができ、参加者も満足できたのではないかと思います。見学後にはKEKつくばキャンパス構内で昼食をとった後、参加者をつくばセンターまでバスで送り出し、スクールは無事終了となりました。最後に湘南国際村センターで撮影した参加者の集合写真を示します。(写真8)。写真には写りませんでしたが、肉眼では奥にうっすらと富士山がたたずんでいました。
写真8 湘南国際村センターでの集合写真 |
お忙しい中、今回のスクールで講義をしていただいた講師の皆様には,改めて御礼申し上げます。また、お忙しい中、参加者の見学を快く引き受けていただいたJ-PARCならびに高エネルギー加速器研究機構の皆様にも感謝いたします。
スクールの会場となった湘南国際村センターの皆様には大変お世話になりました。鎌倉ツアーの手配、葉山から茨城県への移動時の大型バス手配に始まり、その他こまごまとした要求にも対応していただきました。
今回、参加者に日本をより満喫して頂こうと、コーヒーブレイクのお供として全国各地より取り寄せた和菓子も数回出させて頂きました。参加者の中には餡子が苦手な方もおられるようでしたが、和菓子の消費具合をみたところ多くの方に楽しんで頂けたのではないかと思います。
表2 スクールのプログラム |
この記事は日本加速器学会誌に掲載予定です。
〜 記事提供 : 加速器第七研究系 山本 尚人氏 〜