加速器研究施設 技術職員 先輩職員の声
世界最先端に携わるやりがい
仕事に対する責任とやりがい
加速器第4研究系
私は2013年に入構してからSuperKEKBという加速器の制御システム開発を担当しています。制御ネットワークや計算機の整備、電子回路・ソフトウェア開発などが主な仕事です。現在は、機器から送信される緊急停止信号を高速に集約するためのアボートトリガーシステムの開発を行っております。このシステムは機器やビームの異常を検知して、瞬時にビームを加速器外(アボート)に取りだすための発報システムで、安全に加速器を運転し、また安全なビーム実験のためには必要不可欠な装置です。自分が開発・整備したシステムが加速器運転の安全性や効率性に結びつくため、自分の仕事に対する責任とやりがいを感じます。
入ったばかりの頃は分からないことばかりでしたが、先輩職員の方から教わったり、自分で勉強したりして少しずつ技術や知識を身に着けてきました。周囲の方々はどんな些細な質問にも丁寧に答えてくださるので安心です。
好奇心を満たす恵まれた環境
加速器第5研究系
2016年に入構し、KEK入射器の制御グループに所属しています。入射器はPF、PF-AR 、SuperKEKB の各リングにビームを供給しているところです。ここでは高い機器安定性やビーム安定性を維持し、下流リングへ安定した入射を行わなければなりません。そのために制御グループでは、計算機によるビーム制御、機器制御などを行っています。
大学時代は生命工学を専攻していましたので、初めはわからないことばかりでした。しかし、KEKでは入構後に学ぶ機会が多く用意されているだけでなく、様々な分野のエキスパートが周りにいる恵まれた環境であるため、知識も少しずつ身についていきます。まだまだわからないことも多く勉強の毎日ですが、日々目標をもって楽しみながら仕事に取り組んでいます。
最先端の研究開発に貢献できる職場
応用超伝導加速器センター
2016年に入構し、応用超伝導加速器センター 先端加速器試験施設 (Accelerator Test Factory ; ATF)に所属しています。ATFでは、国際リニアコライダーで必須となる極小電子ビーム(ナノビーム)の研究開発をしています。ATFの特徴としては職員が10名程度と少人数なので、分野に囚われず色々な仕事をする必要があります。私の場合、1年目に電子ビーム源となるフォトカソードの性能向上試験やビームラインの改造などの仕事をしましたが、最近では国際リニアコライダーのビームダンプというビームを安全に止める装置の設計も担当しています。このビームダンプは、完成すれば世界最高のビームパワーを止める装置になります。KEKでは技術職員であっても最先端の研究開発に挑戦できるチャンスがあります。その分色々なことを勉強する必要がありますが、新人研修や技術職員のための研修など多くの研修が企画されていますし、頼りになる先輩達がサポートしてくれるので不安になる必要はないと思います。実際に私は転職でKEKに入構しており、前職は加速器とは全く無縁でしたが、先輩方のサポートのおかげでどうにか仕事を進められています。
最先端の研究に携わる
加速器第5研究系
トリスタン実験が開始した時期に入構して以来、電子陽電子入射器(LINAC)の高周波グループに所属しています。主に、ビーム加速に用いられる高周波パルス電力の電力レベルや位相を測定する「高周波モニタシステム」の開発に携わってきました。現状のシステムはSuperKEKB計画に向けて導入したもので、IQ方式の高周波検出器、デジタル変換ボード、FPGAボード、制御・データ解析用計算機などから構成されています。高周波計測、アナログ回路、デジタル回路、組み込みシステム、プログラミングといった分野の技術が用いられていますが、必ずしも全てに精通している必要はありません。重要なのは、要求されている性能や機能から仕様を策定した上で、市販のコンポーネントやメーカーに製造を依頼したカスタム品などを組み合わせ、システムとして完成させることです。今回の開発で課題だったのはLINACの同時入射運転への対応です。これは50Hzで運転しているビームをパルスごとに4つのリング(SuperKEKB電子・陽電子、PF、PF-AR)に振り分ける運転モードで、その制御を司るイベントタイミングシステムが配信するイベント情報により、高周波パルス電力の位相や出力タイミングが20ミリ秒間隔で変化します。高周波モニタシステムでは、イベント情報を取得して次のパルスがどのリングに対応するか常に把握しておく必要があります。イベント情報の取得は、ネットワークを介してソフトウェアで行うことも可能ですがデータの遅延が考えられるため、リアルタイム性を重視しプログラマブルな集積回路の一種であるFPGAに組み込み、ハードウェアで処理することにしました。
私達はILCの実現を目指しています
応用超伝導加速器センター
応用超伝導加速器センターでは、主に次世代超伝導線形加速器ILC(International Linear Collider)を実現するための要である1.3 GHzニオブ製超伝導加速空洞と、極小かつ平行度の高い高品質なビーム生成と制御に関する研究、技術開発を行っています。ILC計画では、16000台に及ぶ9セル超伝導加速空洞の全てで31.5 MV/mの高い加速電場が要求されます。研究を開始して6年目の2010年に、STF(Superconducting RF Test Facility;超伝導RF試験施設)に於いて、私達は日本国内初の加速電場40 MV/mを達成しILC実現に1歩踏み出しました。現在、加速電場の再現性および製造コスト削減を目指した開発が進行中です。衝突点では高さ6 nmの極めて小さなビームサイズが要求されていますが、ATF(Accelerator Test Facility;先端加速器試験施設)では2014年にILCでの7 nmに相当するビームサイズを達成しました。現在、ビームサイズの電流依存性の低減、ナノメートルレベルでのビーム位置制御技術および強大なビームパワーを受け止めるビームダンプ装置等の開発が進行中です。
KEKでの仕事
加速器第6研究系
私は1989年の入構以来一貫して放射光実験施設の加速器、主に入射用パルス電磁石を担当しています。ここ放射光実験施設では、多くのユーザーにより活発な研究活動が行われていて、加速器はその基盤の装置です。私はここでパルス電磁石関連の日々の運転と共に設計や開発も行っています。パルス電磁石は、秒以下の短い時間幅で数千アンペアなどの大電流を用いる電磁石です。このようなパルスで発生させる高強度磁場が、一瞬にして 入射してくる電子ビームの軌道を変化させて、PFやPF-AR などのストレージリン グの周回軌道に乗せることができます。この装置では、特に大電流パルスの波形 を平坦にかつ安定に発生させる必要があります。また、大電流特有のノイズを ビームに与えないための回路の工夫や、長期間にわたり安定な磁場を発生させる ための工夫など、日々、積み上げた経験をもとに開発が続けられています。KEKの良いところは、まわりに優秀な人も多く研究環境も日々変化し、人との関係も緩やかなため、ある程度は自分の興味の持った方向に進める事です。私自身も今までに多くの研究開発に参加してきました。