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ミューオンg-2のハドロン真空偏極をテーマとするワークショップをKEKつくばキャンパスで開催

ミューオンの異常磁気能率 (g-2)の理論値のさらなる高精度化を目指す国際研究グループによるワークショップが2月12日から3日間、KEKつくばキャンパスで開かれ、国内外から約70人の研究者が参加しました。

ミューオンのg-2には、実験値と理論値(標準模型からの予言値)との間に大きな不一致があり、標準理論を超える新物理の兆候を示すと言われてきました。この問題に決着をつけるため、米国フェルミ研究所とJ-PARCは新しい実験の準備を進めています。とくにJ-PARCで計画されている実験は、いったん止めたミューオンを再加速するという、従来とは全く異なる手法を採用したもので、2017年11月に世界で初めてミューオニウム負イオンを、RFQ(高周波4重極型リニアック)を用いて加速する実験に成功するなど着実に進展しています。

一方、理論的な側面では、標準模型からの予言値を計算する上で最も大きな不定性を与えるハドロン真空偏極(HVP)について、精度の向上が求められています。とくに研究者の間では、Belle II 実験や米・イタリア・ロシアの電子・陽電子衝突実験からの新しい実験データの出現や、格子QCD(量子色力学)計算の進展などにより、理論値の精度がよくなることが期待されて来ました。

このような現状を踏まえ、ミューオンg-2の理論計算精度の向上を目的とした研究グループ(muon g-2 theory initiative)が形成され、世界中から専門家を集めて議論することになりました。今回の研究会は、ハドロン真空偏極の寄与に焦点を絞って集中的な議論を行うもので、2017年6月にフェルミ研究所で開かれた初セッションに引き続き、第2回目となります。

研究会では、J-PARCの齊藤直人センター長が「フェルミ研究所での新しい実験が始まり、KEKではBelle II実験が間もなくスタート、J-PARCではミューオンの加速に成功するなど、それぞれに重要な局面を迎えています。g-2の精度は大変重要な課題であり、本日は実りある議論を期待しています」とあいさつ。

米国ブルックヘブン国立研究所(BNL)のChristoph Lehner博士が、研究会の目的や今後の予定などについて説明。3日間にわたり、Belle II 実験をはじめとする世界中の電子・陽電子衝突実験のグループ、フェルミ研究所とJ-PARCのそれぞれのミューオンg-2実験、理論分野の研究者がそれぞれ研究発表を行ったほか、理論センターが主催する素粒子物理学現象論研究会(KEK-PH2018)との合同セッションなども開催され、活発な議論が交わされました。

研究グループでは今後も定期的に研究会を重ね、米国フェルミ研究所から最初の実験結果が報告される前に、これまでにわかった結果を論文にまとめる方針です。


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