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ミューオンg-2/EDM実験グループの安田 浩昌さんが第74回年次大会(2019年) 日本物理学会学生優秀発表賞を受賞 ビーム物理領域では初の選定
2019年6月24日
2019年3月に行われた日本物理学会第74回年次大会において、ミューオンg-2/EDM実験グループの安田 浩昌さん(東京大学大学院 理学系研究科物理学専攻 博士課程2年、KEK連携大学院生)がビーム領域における日本物理学会学生優秀発表賞を受賞しました。この賞は2018年の物理学会秋季大会で制定されましたが、ビーム物理領域の学術講演会は例年春の年次大会1回のみ開催されるため(他の分野は春と秋の計2回開催)、ビーム物理領域の受賞者選定は今回が初になります。
安田さんは「J-PARC muon g-2/EDM 実験:低エミッタンスミューオンビームにおけるスピン反転装置の開発」というタイトルで、ミューオンのスピンの向きを反転させるための装置の開発状況を発表しました。安田さん含む研究チームは、ミューオンg-2/EDM実験においてミューオンの検出漏れによる影響を抑えるための解析手法に着目し、g-2(注)の測定精度を向上することを目的として現在この装置の開発を進めています。
受賞された安田さんにお話を伺いました。
―受賞した感想を聞かせてください。
●安田さん 私が設計している装置は基本構造から自分で考えなければなりませんでした。学生の身にとっては非常に責任重大な研究でしたが、このように評価していただけたことは今後の励みになります。
―今回の研究でどのような点に一番苦労したでしょうか。
●安田さん 先程もお話ししたように基本構造から考えなければならないため、どのようなものを作るか手を動かしつつ考える段階から詳細を詰めていく作業は大変でした。スピン反転装置が既存の設計による高品質なミューオンビームに影響しないようにする点でも苦労しました。中でも、ミューオンビームの質に影響を与えないようにしながら磁場と電場をミューオンにかけ、ミューオンのスピンの方向だけ反転させる設計が難しかったです。
現在は、開発中のスピン反転装置が実際に本実験に導入できるかシミュレーションで検討中です。さらに実際にミューオンビームの質を測定するモニターを試験する実験も行っていて、その成果で名古屋大学大学院理学系研究科博士課程1年の須江さんも今回、日本物理学会学生優秀発表賞を受賞しています。設計から実験に至るまで全てを行っていて大変ではありますが、私の所属しているミューオンg-2/EDM実験グループは他大学の学生も多く、皆優秀で刺激を受けながら楽しく研究に励んでいます。
―今後の目標を教えてください。
●安田さん 将来は自分で新しい研究を立ち上げたいという目標があります。そのために、モチベーションを決めるところから始めて実証試験まで一通りを行う、まさに今自分が担当しているような研究開発の過程をしっかりやり遂げたいです。博士課程の間には物理的な効果を確認しながらより良い装置を作り、本実験に自分の開発した装置を投入したいです。
用語解説
(注)g-2
素粒子や電子は、スピンに伴う磁石の強さ(磁力)を持っています。この磁力の大きさはディラックの相対論的量子力学から導かれる値(g=2)からわずかにずれると考えられています。このずれをg-2(異常磁気能率)と呼びます。
関連リンク
- 第74回年次大会(2019年) 日本物理学会学生優秀発表賞 受賞者一覧
- KEKプレスリリース:「室温ミューオニウムの大量生成に成功—ミューオン異常磁気能率・電気双極子能率の超精密測定による『標準理論の綻び』検証に近づく」
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