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サイエンスアゴラ2017のトークセッション「どこへ向かうの? ビッグサイエンス」にBelle II 実験のコラボレータなどが出席、素粒子実験の意義語る

「ビッグサイエンスとは何か?」「国民の理解を得るために出来ることは?」——。KEK広報室が主催するサイエンスアゴラ2017のトークセッション「どこへ向かうの? ビッグサイエンス」が2017年11月26日、東京都江東区のテレコムセンターで開催され、Belle II 実験コラボレータなどの研究者、学生、会社員、一般など関係者を含めて30人ほどが出席し、ビッグサイエンスをテーマに自由な議論を展開しました。

セッションは、加速器科学や宇宙開発など「ビッグサイエンス」と呼ばれる分野が、実験規模の大型化や必要予算の増大により、短期的なサイクルで継続し、成果を得ることが難しくなっているという現状を踏まえ、賛否を含めそのことについて議論する場を提供するために開催。広報室の髙橋将太・科学コミュニケータが司会進行し、KEKサイドからはBelle II 実験コラボレータの名古屋大学・素粒子宇宙起源研究機構(KMI)の前田陽祐・研究員、欧州原子核研究機関(CERN)の大型ハドロン衝突型加速器(LHC)の高度化に携わる共通基盤施設の鈴木研人・助教、放射光を使った研究に携わる物質構造研究所の小野寛太・准教授の研究者三人が参加しました。

セッションはまず、髙橋コミュニケータが「ビッグサイエンスについてどう思いますか」と問いかけ、参加者からの質問に研究者側が答える形で進行。参加者からは「ノーベル賞を受賞できるのだから重要であるに違いない。お金をかける価値があるのだろう、と何となく感じていたが、そう問われると、そこまで自信がないのか、と逆に感じた」「ビッグサイエンスがうまくイメージできない。実験装置が大きいのか、お金の規模が違うのか、人数を要するのか」「そのお金は誰が負担しているのか」などの質問が寄せられ、Belle II 実験やLHCを例に、現在では日本政府や国際協力により予算や人員が賄われている実情が報告されました。

さらに、「国際宇宙ステーション、ITER(国際熱核融合炉)計画など他のビッグサイエンスと比較して、素粒子の占める位置はどうなのか」「どのジャンルへの投資が国益にかなうのか」といった疑問が出て、日本政府がホストとなることを検討中のILC(国際リニアコライダー)計画にも話題が及びました。前田研究員は、素粒子実験の目的が新しい物理の発見であることに加え、「実験の現場が海外にあると、そこまで出張する費用がかかり、できることも限られる。Belle II 実験のように身近にあれば、非常に便利だし、若い研究者が志す理由にもなる」とホストすることの利点を強調し、理解を求めました。

会場からは「放射光の研究が役に立てられていることはわかったが、素粒子実験はまだよく分からない。ILCは多用途にできないのか」「素粒子の精密測定にどんな意味があるのか」など素朴な疑問も出て、研究者サイドが丁寧に説明。それでも、大学生からは「素粒子研究は何の役に立つのか。親になんと説明したらわかってもらえるのか」という質問が出て、「ロマン」、「知的好奇心を満たす」、「経済効果」や「雇用創出」、「地域の振興」など様々な回答や意見が出ました。

また、他のビッグサイエンスに関わる研究者からは「今回は加速器の業界の話だったが、どのビッグサイエンスも共通する悩みを抱えている。利益をどう国民に説明するかということ。このような場所には、自分たちのやっていることが一番大事な人たちが集まっており、これを国民が支持するかどうかが問題。次回はぜひ、いろいろな業界のことも合わせて話題にしてほしい」との意見も出ました。

セッションは熱気のこもった議論となり、予定の1時間半を超えて約2時間に及びました。


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