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鈴木厚人・前機構長が文化功労者に選出
2021年11月2日
文化の向上発展に顕著な功績を残した人に授与される文化功労者に、KEK前機構長の鈴木厚人先生(岩手県立大学長、KEK顧問)が選ばれました。鈴木先生は素粒子の観測装置「カミオカンデ」や「カムランド」などの建設・実験に携わられニュートリノに質量があることを証明するなど素粒子物理学の発展に大きく貢献したことが評価されました。
鈴木先生は新潟大学を卒業後、東北大学で博士号を取得、高エネルギー物理学研究所の助手となられました。カミオカンデ実験計画時からの中心メンバーであり、最初は20インチ光電子増倍管の開発等に貢献されました。
その後、東大・小柴研の助手時代にはカミオカンデの太陽ニュートリノ観測に向けて純水装置の責任者として活躍されました。カミオカンデの水に含まれる自然放射能はニュートリノ観測の邪魔になってしまいますが、鈴木先生はその自然放射能を3桁以上低減し、超新星爆発や太陽からのニュートリノの観測に決定的な役割を果たされました。
その後、1988年に高エネルギー物理学研究所(現高エネルギー加速器研究機構)に再び移られ、物理研究部非加速器グループのリーダーとしてスーパーカミオカンデの建設に尽力されました。鈴木先生はスーパーカミオカンデの建設が軌道に乗ったことを見届けられてから、ご自身の実験を行うべく1993年に東北大学にニュートリノ科学研究センター長・教授として移られました。その後、カミオカンデの跡地に1000トンの液体シンチレータを用いた低エネルギーニュートリノ検出装置・カムランドを発案・建設されました。原子炉からのニュートリノを測定することにより太陽ニュートリノの観測で発見されたニュートリノ振動が大混合角による振動であることを世界で初めて実証されました。2006年に高エネルギー加速器研究機構に機構長に就任された以降は国際リニアコライダー(ILC)の実現に向けて奔走されました。2015年まで機構長を3期務められた後、ILCの最有力建設候補地である岩手県で、岩手県立大学長を務められています。
ニュートリノグループからのメッセージ
鈴木厚人先生、文化功労章の受賞おめでとうございます。
カミオカンデ当時、水の中の放射能を除去するために粘り強くさまざまな工夫をされて、最終的に超新星爆発からのニュートリノや太陽ニュートリノの観測を成功に導かれたことが思い出されます。この大量の物質に含まれる放射能除去のノウハウがその後のカムランドの成功に結びついたのでしょう。現場の泥臭い仕事を徹底的に極めて、大きな成功に結び付ける先生の仕事のスタイルから我々は多くのことを学びました。
先生が立ち上げられた非加速器グループは、現在素粒子原子核研究所のニュートリノグループとしてT2K実験を主導しています。今後はニュートリノ振動のCPの破れの観測を通して、先生が発展させたニュートリノの研究をさらに進めていきたいと思います。先生は3度目にKEKに移られた時からニュートリノを離れてILCの実現に尽力されています。今度はILCを実現されるよう心からお祈りしております。