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ERL光源と電子ビームにより高エネルギーの光を発生させる手法を提案
cERL光源を短パルス軟X線光源へ

2010年10月15日

島田美帆助教(KEK加速器研究施設)と羽島良一(JAEA量子ビーム応用研究部門)グループリーダーらの研究グループは、コヒーレント放射光と電子バンチとの逆コンプトン散乱により軟X線からγ線領域の光を得るこれまでと異なる手法を提案しました。

加速器を通過する電子バンチに可視光レーザーを衝突させることで、X線など、よりエネルギーの高い光を得る方法をレーザー逆コンプトン散乱と言い、この手法は既に様々な加速器で実証されています。


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現在建設が進められているコンパクトERL の完成図


一方、5-GeV ERL※1の実証器として現在建設が進められているコンパクトERL(cERL)は、電子バンチの長さがサブミリメートルであることから、赤外線よりさらに長波長域の光(コヒーレント放射光(Coherent Synchrotron Radiation : CSR))を放出するテラヘルツ光源でもあります。可視光レーザーの代わりに、このテラヘルツ光を電子に衝突させることで、電子ビームのエネルギーに応じて、軟X線からγ線領域の光を発生させることも可能になります。

この手法によりcERLで得られる軟X線強度は、現在フォトンファクトリー(2.5GeV)の偏向電磁石光源で得られるものと同程度(光子数は帯域10%で1パルスあたり104-5、1秒あたり 1013-14)と見積もられました。5-GeV ERL実現時には、電子ビームのエネルギーが上がるため、γ線領域の光源となり、様々な研究に応用できる可能性を広げます。

本研究の成果はPhysical Review Special Topics - Accelerators and Beams誌2010年10月号に掲載されました。

M. Shimada and R. Hajima : Inverse Compton scattering of coherent synchrotron radiation in an energy recovery linac. Phys. Rev. ST Accel. Beams, 13, 100701 (2010)


<用語解説>

※1 ERL
エネルギー回収型線形加速器(Energy Recovery Linac : ERL)。
放射光を得るための次世代型加速器。放射光を放出してエネルギーを失った電子を再び加速して使用する蓄積型リングに対し、放射光を放出して戻ってきた電子のエネルギーだけを回収し、一周ごとに新品の電子を加速させる。常に質のいい電子バンチ(電子のかたまり)が周回するため、フォトンファクトリーのような蓄積リングでは原理的に不可能な小さなエミッタンスビームやサブピコ秒の短バンチが可能になる。この特徴から、将来計画の5-GeV ERLは高輝度・短パルスのX線光源として期待されている。