2011年5月6日
4月27、28日、機構内にてERLサイエンスワークショップⅡが開催されました。
このワークショップは、放射光を利用実験している研究者の立場から、次世代放射光光源であるエネルギー回収型ライナック(Energy Recovery Linac:ERL)の実現によって可能になるサイエンスについて議論することを目的としており、2009年7月に続く第2回目となります。
震災後、初めて機構外を含めた放射光研究者が集まったこともあり、開会にあたって下村理所長(KEK物質構造科学研究所)からフォトンファクトリーの被害と復旧について説明がありました。「このような状況で、研究者として今やるべきこと」として、サイエンスをしっかり議論してほしいと挨拶がありました。
並河一道教授(東京理科大学)による問題提起の後、ERLの特長を最大限発揮できる実験技術としてX線顕微鏡や非弾性散乱、時間分解測定などが提示されました。また、それらの技術によって見えてくる新しい科学の可能性を物質科学・生命科学から提案され、実現性について意見が交わされました。議論の中では、自動車の排気ガスを浄化する触媒の反応過程を「原子レベルでの触媒反応の中間体を見たい」とERLの時間・空間分解能に期待する声や、ERLと共振器型自由電子レーザーとの組み合わせにより、タンパク質の超微小結晶を非破壊で高速のスナップショットで捉えられる短パルス性能に期待する声が聞かれました。
今回のワークショップはサイエンスに重点を置いて開かれ、各分野が描く将来展望とともに具体的な実験について話し合われる場となりました。