2011年3月3日
図1
素粒子原子核研究所の宇野彰二(うの・しょうじ)准教授が高エネルギー加速器科学奨励会小柴賞を受賞しました(図1)。この賞は素粒子研究のための粒子検出装置の開発研究において、独創性に優れ、国際的にも評価の高い業績をあげた、研究者・技術者に贈られます。今回受賞対象となった研究課題は「マイクロパターンガス検出器による中性子・X線画像装置の開発」です。
旧来の金属細線を使ったガスチェンバーに代わって、近年、微細加工技術を利用したマイクロパターンガス検出器の開発が進められてきています。宇野氏はその中でも、ガス電子増幅器(GEM)を用いた放射線検出器の開発を行ってきました(図2)。この測定器では、中性粒子に対する1点の測定ポイントで2次元位置情報が得られることから、中性子・X線に対して画像データの取得が可能となります。また、特殊用途集積回路やプログラム可能なデジタル集積回路などを搭載した電子回路との組み合わせを行うことで、コンパクトな検出器システムを開発しました。このシステムを用いることで、J-PARCの物質・生命科学実験施設(MLF)などのパルス中性子源において、金属の内部構造が調べられる中性子波長別ラジオグラフィという新しい分野を切り開くことに成功しました。また、GEM表面に付加する物質をかえるだけで、エネルギーの高いX線に感度がある検出器への応用も可能にしました。
授賞式は3月24日に行われる予定です。