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細山謙二氏、赤井和憲氏が折戸周治賞を受賞

2011年6月9日

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6月5日(日)、KEKの細山謙二教授と赤井和憲教授の両氏が、第2回折戸周治賞を受賞しました。折戸周治賞は、平成基礎科学財団(理事長:小柴昌俊東京大学特別栄誉教授)が素粒子物理学に大きく貢献した故折戸周治東京大学教授の業績を記念して設けた賞で、衝突型加速器による素粒子研究あるいはそのための加速器研究においてすぐれた成果をあげた研究者に対して顕彰が行われるものです。

受賞対象となった業績は「超伝導クラブ空洞※1の開発とKEKBファクトリーへの応用」です。両氏は超伝導クラブ空洞の開発において、基本構想から最終的な運転に至るまで指導的な役割を果たし、二つのビームをカニの横ばいのような状態で衝突させる「クラブ衝突」を世界で初めて実現させました。この技術は、有限角度衝突方式※2でビームを衝突させるKEKB加速器の性能向上に貢献するとともに、CERNの大型ハドロンコライダー(LHC)や次世代加速器の国際リニアコライダー(ILC)などへの応用の道を開きました。

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前列左から、赤井和憲KEK教授、細山謙二KEK教授、小柴昌俊平成基礎科学財団理事長、中畑雅行東京大学宇宙線研究所教授(第二回戸塚洋二賞受賞者)


小柴氏より表彰を受けた赤井氏は「クラブ空洞開発チーム、KEKB、Belle、その他にも支援いただいた沢山の方々に対して感謝の気持ちで一杯です」と述べ、細山氏は「この開発と応用の全てが日本人のリードによって達成されました。日本の物作りが評価された結果だと思います」と謝辞を述べました。

<補足説明>

※1 超伝導クラブ空洞
ビームである粒子の塊(バンチ)の先端と終端部分を電磁場の力で逆方向に回転させ、二つのビームをカニの横ばいのような状態で衝突(クラブ衝突)させることができる。これにより、有限角度衝突方式の加速器で起こる幾何学的・力学的な効果によるルミノシティー(加速器の衝突性能に相当)の減少を解決し、有限角度方式の長所を保ったまま、正面衝突方式のような、ルミノシティの向上を実現した。
※2 有限角度衝突方式
衝突ビーム加速器における、二つのビームを角度をつけて衝突させる方式のこと。偏向電磁石等を用いずにビームが衝突点の外で素早く分離されるので、衝突点以外でのビーム・ビーム相互作用と呼ばれる散乱や、測定器への放射光の影響を軽減できる長所を持つ。