これまでにもご紹介してきたKEKと日本原子力研究所が共同で建設を進めている大強度陽子加速器施設の愛称が決まり、10月28日行われたこの施設の着工記念式典で発表されました。今日はジェイパークと命名された大強度陽子加速器施設についてお話しましょう。
ジェイパークとは
大強度陽子加速器施設は、読んでお分かりのように陽子の加速器を組み合わせた研究施設です。それを英語で表記すると Proton Accelerator Research Complex ですが、これにJapanを付けて頭文字を連ねるとJ-PARCとなります。それをカタカナ表記にしたのがジェイパークで、大強度陽子加速器研究施設の特徴を英語表記で示した略称となっています。
英字表記のPARCは一方でフランス語では公園を意味します。私たちもパークといえば公園を思い浮かべますが、この施設が建設されている東海村の現場は松林が連なる地区で、公園というイメージとよく合います。また、JはKEKと日本原子力研究所の共同プロジェクトを指すJointのJともとれ、このプロジェクト施設の愛称としてはぴったりの名前になったようです。このページでも今後は大強度陽子加速器施設の代わりにこの愛称を使いますので、皆さんも覚えてください。
ジェイパークはどんな公園か
完成すると、海岸に面した松林の連なる区画と芝生の中に点在する実験施設、それらを結ぶ陽子が加速されて走りぬける加速器の施設が広がる世界がジェイパークです。これまでにもお話しましたが、ジェイパークで、陽子はまず直線状の加速器であるリニアックで加速され、三角形に近いリングをした加速器である30億電子ボルトシンクロトロン、さらにそれを拡大した500億電子ボルトシンクロトロンで光速に近い速さにまで加速されて行きます。この間に目的に応じた実験を行うと事が出来ます。
加速された陽子は原子核の標的に衝突させ、そこで2次的に生じた粒子(π中間子、K中間子、反陽子、中性子)を使った実験が行われます。特に、タンパク質やリチウムイオン電池材料の構造解析など、ジェイパークの加速器群が生み出す大強度の陽子ビームから生まれる中性子やミュオンを使った生命・物質科学の先端研究は、世界中から注目を集めています。ジェイパークの実験のもう一つのテーマは原子核素粒子科学の実験です。この実験ではK中間子や、π中間子から生まれるニュートリノが大活躍します。
ジェイパークからノーベル賞学者を
28日の記念式典には、今年ノーベル物理学賞を受賞した小柴昌俊さんも参加して、これからのジェイパークの素粒子実験に対する期待を語りました。現在KEKと岐阜県の神岡にあるスーパーカミオカンデを使った、ニュートリノの振動を調べるK2K実験についてはこれまでにお話して来ました。次はジェイパークで生まれるK2Kの100倍以上の強度を持ったニュートリノのビームを使い、スーパーカミオカンデと結ぶニュートリノ振動実験は、世界中のニュートリノ研究者が注目する計画です。ジェイパークのニュートリノ実験が、小柴さんに続くこの分野の研究者たちを育んでくれるかもしれません。これからのジェイパークの実験や研究を皆さんもご注目ください。
※もっと詳しい情報をお知りになりたい方へ
→日本原子力研究所(原研)のwebページ
http://www.jaeri.go.jp
→大強度陽子加速器計画のwebページ
http://jkj.tokai.jaeri.go.jp/index_j.html
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