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理科好き人間、あつまれ! 2004.4.8 |
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〜 SSH 生徒交流会 〜 |
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スーパーサイエンスハイスクール(SSH)という学校をご存知でしょうか? 「理科離れが進んでいる」という話題に関心が集まる中、文部科学省が平成14年度から「理科の好きな生徒がもっと理科が大好きになるように」と進めている、理科教育の重点化プランの一つです。全国の都道府県から平成14年度に26校、平成15年度に26校、あわせて52校が指定されていて、指定校の高校生と、いろいろな大学や研究所の研究者らが交流し、専門的な科学的知識の講演や実習などの交流を行っています。 そのスーパーサイエンスハイスクールの平成15年度の生徒交流会が3月24日から26日の三日間、つくば市で開かれ、全国から選ばれた208人の高校生が、筑波研究学園都市の8つの研究機関を訪れて、いろいろな研究実習を行いました。 バスの中で顔あわせ KEKでは北海道から沖縄まで22の都道府県の26校からそれぞれ1名ずつを受け入れて、「素粒子を探る」と題した二日間の研究実習を行いました。 全国から飛行機や列車やバスを乗り継いで、つくば市内の国際会議場で開かれた開会式に出席した高校生は、それぞれの研究機関に向かうバスに乗り込み、これから同じグループとして実習を一緒に行う他の学校の生徒さんと初めて顔をあわせました。 皆さん、KEKで行う実習のグループ分けなどの説明を聞きながら、新しい仲間との会話に、期待半分、緊張半分、といった面持ちでした。 KEK側では24名のスタッフが事前の準備と打合せを済ませ、生徒の皆さんを受け入れました。戸塚洋二(とつかようじ)機構長は「皆さんにお願いしたいのは、答のあるものを勉強して覚えるんじゃない、ということ。もともと理科というのは答のないことをやる。知らないものをやるわけですから、わからないことがあったらどんどんスタッフに質問してください。スタッフが答えられなかったら、笑ってやりなさい。」という激励(?)の挨拶をしました。 放射線を自分の目で 一日目の実習は、一人ひとりが自分で霧箱を製作し、放射線を自分の目で見るという観察です。 霧箱という装置は以前にもご紹介しましたが、アルコールの蒸気を冷やした中を放射線が通過すると、飛行機雲ができるのと同じように、目に見えない放射線をその飛跡によって「目で見る」ことができるようになります。 簡単な装置で初めてみる放射線の様子について、生徒の皆さんは熱心にスケッチをしたり発表したりしていました。 4つのグループ 二日目の実習は4つのグループに分かれて、それぞれ「電子銃をつくろう」「原子核から出てくる粒子を見てみよう」「ワイヤ検出器の製作と粒子の観察」「真空度をはかる」というテーマで実習に取り組みました。 真空中で金属を熱した時に出てくる電子の様子や、放射性同位元素が壊れる時に出てくる放射線の性質を調べたり、粒子や真空度を測定するための装置の原理を調べたりしたあと、実際の加速器で使われている実験装置なども見学し、その巨大さに驚くとともに、自分たちが行っている実習の内容が実際の研究の現場でも利用されていることを改めて実感していた様子でした。 午後になると、それぞれの実習で学んだことを他の人にもわかるように伝えるための成果発表(プレゼンテーション)の準備に移り、一日前に初めて顔をあわせた初対面のメンバーとはとても思えないほど和気あいあいとした雰囲気で、熱心な討論を重ねながらプレゼンテーションの材料を準備していました。 「ピア・レビュー」ということ 三日目には舞台を国際会議場に移動して、それぞれのグループが成果発表を行いました。実習で学んだことを他の人に分かりやすく説明する、ということも、研究者にとっても重要な能力の一つです。 すべてのグループが全員の前で発表するだけの時間はないので、それぞれの研究機関に派遣されたグループの中でまず「予選」を行い、どのグループを「全体発表」に送り込むかを決めます。 KEKに派遣された4つのグループでは、生徒全員が「審査員」となって、自分たちのグループ以外の3つのグループの誰がいちばんよい発表をしたか、という投票を行いました。このように実習を行ったお互いが、お互いのやり方を相互に審査したりアドバイスしあう方法は「ピア・レビュー」と呼ばれていて、研究者も実際に大学や研究所などでよく用いている方式です。「ピア」というのは英語で「仲間」という意味です。 どうどうとした成果発表 前日の午後の事前練習では「明日までにはちょっと準備が間に合わないかな?」と心配したグループもありましたが、皆さん、宿舎に帰っても疲れも忘れるほどに熱心に発表の練習に取り組んで、ついに徹夜をしたグループもあったそうです。 いざ発表が始まってみると、予選でも全体発表会でも、それぞれのグループを指導した先生が顔負けするほどの専門的な質問と回答のやりとりがあって、「物理学会の大会に出してもそのまま通用するのではないか」と思えるような、堂々とした発表ぶりが印象に残りました。 文字通り、日本全国から集まって、初めて顔をあわせたメンバーによる三日間の実習と成果発表でしたが、皆さん時間も忘れるほどに熱心に取り組んで、準備を行ったスタッフも大きな充実感に浸ることができました。 KEKでの実習が終わって生徒の皆さんが宿舎に戻る前、KEK側の総括責任者の森田洋平(もりたようへい)氏から「10年後、20年後には、皆さんが研究者としての道を選んでいて、皆さんと一緒に仕事ができるようになることを楽しみにしています。」という挨拶がありました。
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