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離れていても精密実験 2007.2.22 |
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〜 近未来の研究スタイル=コラボラトリー 〜 |
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以前、このコーナーで、KEKフォトンファクトリーで始まったコラボラトリーという取り組みについてご紹介しました。遠く離れた研究所をネットワークで結び、各地にいる研究者が、あたかも1つの研究室を共有しているような環境を作り出す研究システムです。これにより、会議や打ち合わせはもちろんのこと、実験装置の操作も含めた一連の作業が、遠隔地に居ながら行うことができます。2002年10月の記事では、手始めとして岡崎市にある分子科学研究所からフォトンファクトリーの実験装置を操作する試みをお伝えしました。 フォトンファクトリー・BL-1Aにて 2002年10月の成功以来、コラボラトリーを使って行われた実験は10件以上に上ります。計画に参加した機関は、東北大学金属材料研究所(IMR)、東京大学物性研究所(ISSP)、自然科学研究機構分子科学研究所(IMS)、京都大学化学研究所(ICR)、それにKEKの5機関です(図1)。つくばから数十kmから数百km離れた各機関の研究者達が、このシステムを使って、フォトンファクトリーのBL-1Aというビームラインに設置された多目的極限条件下ワイセンベルグカメラという装置を動かし実験を行いました(図2)。特に水素内包フラーレンや分子性導体の電子状態の観察では、このコラボラトリーが活躍しました(図3)。 各地からリアルタイムで参加 コラボラトリーの具体的な仕組みは、インターネットを経由して、TV会議システムとデジタルデータ会議システムを多地点から常時接続可能にしたシステムと、実験装置制御のためのアプリケーションを共有可能にしたシステムからなります(図4)。これにより会議や打ち合わせ、実験現場でのパラメーターの変更・選択などの研究方針の決定にリアルタイムで参加することが可能です。また、自動運転により分析的な実験を行う場合には、遠隔地からのリモートコントロールシステムとして、コラボラトリーは有効に機能します(図5)。「大学の居室にいながら遠く離れた実験現場のリアルタイムのデータを見て議論できることは時代のニーズに適応しており、近未来では標準となるでしょう。」と、システム開発を行ったKEK物質構造科学研究所 教授の澤博氏は、その実用に確かな手応えを感じています。 また、澤氏は、「このようなシステムはまだあまり一般的ではなく、実用に耐えるパフォーマンスを確保するには専用回線の敷設などが必要なのでコストが嵩み、設定作業も煩雑になります。そのような中でも私たちは、なるべく現実的で簡便に導入できるシステムを採用しました。」と、システム開発にあたってはコストと作業労力を少なくすることに重点を置いたことを述べます。また、「その代わり、システムの運用の段階でセキュリティのためのファイアーウォールに関係した様々なトラブルが生じ、安心して利用できるようになるまで2年近く試行錯誤しました。」と、システム導入は細心の注意が払われつつ進められたことを説明し、「今回のシステムの開発とその運用には、KEK計算科学センター、分子研計算科学研究系、マイクロソフト社の専門家とも度重なる検討を行いました。協力していただいた関係の皆さんに感謝しています。」と、5年間のシステム開発を振り返ります。 大型研究施設と共同利用 コラボラトリーの開発が計画された背景には、大型施設の役割と共同利用のあり方に対する問題意識があります。澤氏が指摘するのは、特殊で大型の施設が国際競争力をつけるためにますます先端的な性能を求め、需要が増す一方で、そういった施設での研究の回転が一段と速くなり、実験作業の効率化を求める向きが強くなってきたという点です。この流れの中では、研究者は、先端化する施設との情報共有を常に最新に保つ必要があり、かつ実際の実験に臨んでは、これまでのように研究者が施設の一堂に会して実験を行うスタイルで生じる移動に伴う時間的・コスト的ロスを省くことが有効です。先端化する施設とそれを使った研究のスピード化に見合った共同利用のあり方をつくり出すところに、コラボラトリーの意義があると言えるでしょう。 このコラボラトリー開発の試みは、2002〜2006年にかけて行われました。今回の開発成果が、研究現場の様相を一変させる、そんな時代はすぐそこかもしれません。
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