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測るを窮める 2007.9.27 |
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〜 Bファクトリーに新ビームライン 〜 |
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今年の夏は最高気温が摂氏40度を超えるところもあって、ほんとうに暑かったですね。夏バテとか大丈夫でしたか? ところで「最高気温40度」という時の気温を測ったりするには、温度計が使われます。理科の実験などでおなじみの温度計といえば、ガラス管の中に赤く着色したアルコールを入れたものでしょうか。暑くなるとアルコールが膨張し、寒くなると収縮したりするのを、目盛りをつけて「温度」として読み取る訳です。 では、その目盛りはどうやってつけるのでしょうか? 温度などのようになにかを測ろうとするとき、その基準となる目盛りのつけかたによって、測った結果の確からしさに影響が出てしまいます。加速器の実験などで用いる素粒子反応の測定器においても、測ることの「確からしさ」を調べることがとても大切です。 測定器に「目盛り」をつける 目に見えない、電子顕微鏡を使っても見られないような小さな素粒子の反応を調べるためには、以前ご紹介した光電子増倍管や新型の測定器などが必要になります。これらの測定器は粒子の飛跡(位置の情報)や粒子が持つエネルギーを測定します。これらの測定に「目盛り」をつけるためには、あらかじめ位置やエネルギーがわかっている粒子を使って、測定器の反応と比べてみる以外にありません。 そのためには宇宙線のように、空から降ってくる粒子を使ったり、放射性同位元素を使って調べたりすることもありますが、加速器を使って実験を行うための測定器には、加速器で作り出したエネルギーの高い粒子による「目盛り」をつけるのが最適です。 このように測定器に「目盛り」をつけたり、また一方で測定器の性能評価を行う、高エネルギー電子取り出しのためのビームライン(FTBL)が、KEKB加速器の「富士実験室」という施設の中に作られました(図1)。 富士ビームライン(FTBL)の概念 このFTBLは、KEKBの8GeV電子リング・富士直線部から発生するガンマ線を活用して、Bファクトリー、さらには将来の様々な素粒子・原子核実験に使われる測定装置の開発を支援する設備です。 KEKBの富士実験室の上流には、電子リングの100mに及ぶ長い直線部分があります。そこでは世界最強の電子ビームと高真空ビームパイプ中の残留ガスの反応によって、レーザーポインターなみのシャープなガンマ線のビームが発生しています。これまでこのガンマ線は、特に利用されることもなくこの直線部末端のビームパイプで吸収されていました。 そこで今回、FTBLではこのシャープなガンマ線を、ビームパイプの形を工夫することで効率的に大気中へ取り出し、タングステンの標的に当てて高エネルギーの電子ビームを作り出し、電磁石を使ってKEKBトンネルの外へと導きます。 FTBLの軌道は、KEKBの電子・陽電子ビームをほぼその交差点で潜り抜けてから、コンクリートシールドに斜めに空けられた長さ約1m・直径10cmの孔を通り、加速器エリアの外へと導かれ、最終的には水平方向へと振り戻され実験エリアへと収束されます(図2)。 この大胆ともいえる3次元軌道設計のため、電磁石の配置は他所ではみることが出来ないほどダイナミックで、ちょっと迫力があります(図3、4)。 ベテラン機器が集結 全部で12台使われるFTBLの電磁石の内9台は20年以上前に建造された「退役」磁石の再利用です。またこれらの電磁石を駆動する10台の電源は、30年前KEKの揺籃期の研究で使われたもので、現在の大部分の職員よりもベテランといえます。これらの機器は関係者の多大な努力によって調整・修理が進められ、ようやくと建設にこぎ着けました。 10月より運用開始 通常、大学の研究室などで測定器のテストを行うには、弱い放射性同位元素からの放射線が使われます。残念なことにこれらの放射線はとてもエネルギーが低いため、テストできる項目はとても限られています。例えば複数の測定器を組み合わせたテストは、放射線が途中で阻止されるため実現できません。そんなときこのFTBLのビームがあれば、同位元素からの放射線の1000倍ものエネルギーで、きちんと測定器システムを貫通して、正しい性能評価の手助けをしてくれます。 3GeVのFTBLは決して高いエネルギーではありませんが、そういった意味で、様々な測定器をテストして、その性能を磨いていくにはとても便利な装置になることから、Bファクトリーの関係者ばかりか、高エネルギー物理学研究者会議はじめとする全国十数大学の研究者、世界各地の研究者からも大きな期待が寄せられています。
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