K2K(KEK-神岡間)長基線ニュートリノ振動実験


素粒子原子核研究所
 K2K 実験グループ 
  助教授 作田誠
ビデオインタビュービデオインタビュー


ニュートリノとは
意外に身近なニュートリノ:


ニュートリノは素粒子の中で最も性質が分かっていない粒子です。それはニュートリノが電荷を持たず 中性であり、他の素粒子と反応しにくく、性質を調べようにも捕え所がないからです。ニュートリノは目には見えないものの、実は以下に説明するように意外にも私達の周りには非常に多く存在する素粒子な のです。

宇宙から降ってくる陽子等の宇宙線は、地球の大気中の窒素や酸素に衝突してパイ中間子を生成します。その中間子はミュー粒子とミューニュートリノに崩壊し、ミュー粒子はさらに電子と電子ニュートリノとミューニュートリノに崩壊します。大気中で生成されるニュートリノは大気ニュートリノと呼ばれ、人間の体を毎秒10個以上突き抜けています。また、ミュー粒子も人間の体を毎秒1個以上突き抜けているのです。

 太陽は水素の核融合反応で燃えており、その核融合反応の際に電子ニュートリノが生成されます。そのニュートリノ(太陽ニュートリノと呼ばれる)は人間の体を毎秒十兆個以上突き抜けていっているのです。

宇宙は、約200億年前に大爆発(ビッグバン)で始まり膨張を続けていると考えられてますが、宇宙初期には全ての素粒子は熱平衡状態で同程度存在していました。時間が経つにつれ温度が下がり、 元素が合成され、現在の姿になったと考えられています。しかし宇宙初期の光とニュートリノは宇宙全 体に現在でも一様に残っているのです。その光は1965年に発見され、宇宙背景放射と呼ばれ、ビッグバ ンの有力な証拠になったわけです。その光は1センチ立方に約400個、ニュートリノは1センチ立方に 約300個で宇宙全体に一様に満ちており、その存在量は宇宙の中で一番多い元素である水素の十億倍も あるのです。このニュートリノは人間の体を毎秒千兆個以上も突き抜けています。こんなに人の体を突 き抜けて大丈夫かと心配かもしれませんがほとんど何の反応もしな いので害はありません。

ニュートリノは、これだけ宇宙規模で多く存在するので、0でない有限の質量を持つならば、宇宙の膨張を止めて収縮してしまう程でもあるわけです。また宇宙には電磁波で見えない物質「ダークマター」があることが知られているますが、ニュートリノはその候補にもなっています。今、我々が探しているニュートリノの質量の領域は、ダークマターになる領域より数桁低い領域ですが、それをはっきりさせるためにもこの実験は重要です。

ニュートリノとニュートリノ振動(やさしい物理教室)