スーパーカミオカンデ実験グループの実験結果は、「地球の上から来るミューニュートリノの測定量は計算値に比べて減っていないが、水平方向及び地球の裏側からくるものが計算値に比べて減っている」と いうものでした。地球の裏側からの大気ニュートリノは地球中で失われることなく突き抜けて来ます。この結果は、ミューニュートリノが500km程度以上走るとタウニュー トリノに転化すると考えるとうまく説明されるのです。
このように、1種類のニュートリノが他の種類のものに転化する現象を「ニュートリノ振動」と言います。この現
象が起こるためには、2つのニュートリノの間に質量差があり、かつ混合がなければならないのです。従って、スーパーカミオカンデの結果は、ニュートリノの質量がある証拠を発見したということになるわけです。詳しい解析から、その質量差は、0.07電子ボルト程度であると推定されましたが、この質量は、電子の質量の約1千万分の1という軽さ(10-34グラム)に相当します。
「つくばー神岡間ニュートリノ振動実験」は、高エネルギー加速器研究機構(KEK)の陽子加速器で人工的に作ったミューニュートリノビームを250Km離れたスーパーカミオカンデに向け発射し、ニュートリノ振動を確認し、さらに質量差、混合度を良い精度で測定するための実験です。この発射の照準は、0.1°の精度が要求され、2.2秒毎に約百億個のニュートリノがスーパーカミオカンデに向かって発射されます。
|