K2K(KEK-神岡間)長基線ニュートリノ振動実験



ビームライン 実験の方法:

K2K(KEK-神岡間)長基線ニュートリノ振動実験は、KEKの前置検出器で出発地点でのミューニュートリノの数を正確に測定し、スーパーカミオカンデで測定されたミューニュートリノの数を比較して、数が減っているかどうかを調べる実験です。この人工的に作ったミューニュートリノビームは、自然の大気ニュートリノより素性がはっきりしているので実験結果への不定性が少ないのです。反応の頻度は、前置ニュートリノ検出器では20秒に1個、スーパーカミオカンデでは2日に1個程度で、最終結果を出すには1年以上かかります。この実験は、1999年4月から開始され、前置ニュートリノ検出器からのニュートリノ反応は既に検出されていましたが、1999年6月19日(土)午後6時42分(日本標準時間)に、スーパーカミオカンデにおいて最初のニュートリノ事象を観測しました。


KEKでは、12GeV陽子シンクロトロン(加速器)からの陽子ビームをターゲット物質(アルミニウム)に当て大量に発生するパイ中間子の方向を電磁ホーンで前方に揃え発射します。発射されたパイ中間子は、崩壊パイプの中を通過しミュー粒子と ニュートリノに崩壊します。ニュートリノフィルター(鉄でできているパイプ)は、土と鉄板でできていますがニュートリノだけがフィルターを通過します。通過したニュートリノの一部は、前置検出器で観測されますがそのほとんどが地中に打ち込まれます。前置検出器を通過したニュートリノは1ミリ秒後に神岡に 到達し、その中のごく一部がスーパーカミオカンデで観測されるわけです。


前置検出器は、1000トンの水チェレンコフ検出器(ベビーカミオカンデ、東大宇宙線研担当)とファイン・グレイン検出器からなります。この測定器は、加速器で作られたニュートリノビームの空間的な分布や成分を精密に測定することを目的としています。発生地点でのニュートリノビームの特徴を十分押さえることで、信頼性の高いニュートリノ振動の測定を行なうことができるのです。