中性子回折法による新型電池の研究
研究の例 3
■カーボン負極の構造とリチウム吸蔵機構の研究
東工大菅野先生、産総研辰巳先生との共同研究
負極炭素材料は充放電曲線の特徴から4種に分けられていますが、そのうち
難黒鉛化性炭素
は熱処理温度を高くしても黒鉛化が進みにくいものです。
特に1000−1400度付近で熱処理されたものは密度が低く、ナノサイズのすき間が内部に多数存在します。 LiC
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を越える高容量などのため、電池の高エネルギー密度化に有利ですが、急速充放電時に高容量を引き出すことが課題です。
Liを吸蔵させた
難黒鉛化性炭素
には2種のLi吸蔵サイトがあると考えられています。
ひとつは炭素結晶の
層間サイト
であり、グラファイト(黒鉛)などで見られるものです。 もうひとつは
ナノサイズの空隙
(ボイド)中であり、イオン性よりも金属性が強い金属クラスター状に吸蔵されていると考えられています。
これは0.1V以下での大きな容量と関係していると考えられますが、これまでは構造解析が行われておらず、まだはっきりとはわかっていませんでした。 中性子では0.1V程度までの部分挿入の場合はLiは層間サイトに吸蔵され、それ以上はボイドに吸蔵されていく様子がはっきり見えていますので今後の研究に注目が集まっています。
上の図は難黒鉛化性炭素材料の中性子回折パターン(左)と、それ結果得られた概念図(右)です。 右図の緑の丸はリチウム原子をあらわし、六角格子状の板はグラファイト層を表します。
中性子から得られるナノ空孔のサイズと分布、形状、グラファイト層の大きさに関する情報は、今後の負極材料の物質設計に大変有用だと考えられます。
■意義と今後の展望
私たちは、電極材料の構造変化と充放電特性との因果関係を調べることが重要だと考え、まず高強度高分解能中性子回折装置
Sirius
を開発しました。
現在、中性子構造評価法と実用電池製作を有機的に結びつける方法を開発しようとしております。