KEK 貴社が創業された頃についてお聞かせください。
辻会長 当社が1977年(昭和52年)に創業して間もなく、新設された放射光実験施設(PF)向けにKEKから頂戴した仕事が、当社とKEKの長いお付き合いの原点となりました。KEKからご覧になると、地元で融通を利かして研究者と一緒に努力してくれる業者が見つかったと思って頂けたのではないかと思っています。研究所とのお付き合いが始まった当初は、何でもできる会社であると自負していたのですが、実際に仕事でのやり取りが始まると経験不足を思い知らされました。しかし、多数の研究者の方々と一緒に考え、試行錯誤しながら開発を進めるという、得難い経験をさせていただきました。
KEK 貴社の創業間もない頃に深く関わっていたのがPFであったということですね。
辻会長 そうですね、PFを運転・維持していくための電子装置を次々とご注文いただき、人を増やし場所を拡張していきました。KEKとの取引を開始できて2-3年が過ぎた頃、「都度の特注ではなくカタログに基づく注文はできないのか」との質問をある研究者の方から頂戴し、現在に続くカタログ品の販売も開始しました。16チャンネルのステッピングモーターコントローラーはまさにその例で、「製品開発が完了しカタログ化された暁には2台買います」との、嬉しい予約を頂戴したことを覚えています。その際も、関係したKEKの研究者の方々は設計プランを親身になって考えてくださいました。製品というものは私どもが創ったように思われますが、お客様のアイデアが詰まっています。そのアイデアに可能な限りお応えできるよう、アイデアを形にしていくことが当社の役割です。
また、当社の経営理念には「科学技術の発展をサポートする」ことが謳われており、お世話になって参りましたKEKに対し、この理念を何らかの形で表現できれば、という想いがありましたので、寄附金募集が開始されたことを機会に支援をさせていただきました。
KEK KEKとの思い出のお話を有り難うございました。辻会長や、今は幹部やベテランとなっているKEK研究者たちが若かりし頃、科学技術の発展を共に目指し、生き生きと活動的に一緒に仕事をしておられた光景が目に浮かぶようです。
植松社長 KEKの方々はとてもフレンドリーなので、一緒にアイデアを出し合って一つのものを作り上げるということで、仕事を楽しんでやらせていただいております。
当社は、専門の営業部門は持たず、お客様からの依頼に応じてエンジニアが出向き、設計仕様など技術的な打合せから見積書の作成まで全て包括的に対応するという態勢になっています。その方が話も早く、お客様から好評をいただいています。また、製品が故障した際は、どのように古いものでも図面を保存しておりますので、スムーズにメンテナンスを行うことができ、アフターケアは万全です。また、そのような文化を社内で若手に継承してきていますので、どのような古い製品でも安心して長く使用して頂くことができます。
KEK ユーザーと直結して話ができるという態勢は大切ですね。KEK研究者とのコンタクト窓口となるエンジニアの方々は、プロセスや製品を全て理解されており、研究者も心強いと思います。それに、無期限メンテナンスというコンセプトにはとても安心感があります。
辻会長 私どもにとっては無期限が当たり前と思っていました。特に、大型の加速器の運転や実験が全て完了するまでは長い年月を要します。そこで、製品の保証に期限などあればあっという間にその期限が過ぎてしまいます。
植松社長 古い製品の場合、当初使用した部品が製造中止になるケースもありますが、独自開発の製品ですので、同等の機能を持つ代替部品を探して装着するなどの方策によりメンテナンスを行っています。お客様を見放すことは一切有りません。