この夏、研究者になろう!
先輩からのメッセージ
神田 聡太郎さん
理化学研究所 仁科加速器研究センター(2期生)
私は2008年に第2回のサマーチャレンジに参加し、宇宙線ミューオンを使った演習に取り組みました。物理学に対して漠然とした興味しか持っていなかった私にとって、サマーチャレンジの講義と演習はその後の進路を考える上で大変よい刺激になりました。現在は陽子の内部構造に興味を持ち、J-PARCおよび英国にある理研のRAL支所でミューオン水素原子と呼ばれる特殊な原子の超微細構造をレーザーで精密に測定する実験に取り組んでいます。
サマーチャレンジの講義は素晴らしいもので、しばしば密度が高く理解するために時間がかかるかもしれませんが、その道に進むか否かによらず大変よい学びが得られます。演習はコースや課題によって様々ですが、どれを選んだとしても取り組むこと自体がとても貴重な体験となるかと思います。他者と議論することや自分の考えを伝えることも学べます。参加者同士での交流から得られるものも多いはずです。
夏の短い期間ではありますが、研究の楽しさや苦しさに触れるまたとない機会です。物理学に興味はあるがどこから手をつけてよいか分からない人、研究の道を志すかどうか迷っている人、何事も実際に体験することで判断したい人に特に勧めます。
井上 優貴さん
Academia Sinica, Institute of Physics 研究員(3期生)
「あれ!?君たち何つながり?」 「サマチャレです!」
サマチャレ参加者なら一度は耳にする言葉です。たった4年間の学部生の生活でサマチャレがなければつながる事の無かった人たち。そんな思い思いに物理を学ぶ人たちが、たった10日程の間に繋がるイベント、それがサマチャレです。
私が参加したサマチャレは今から9年前。当時はヒッグス粒子も重力波もまだ発見されていませんでした。これらの例は沢山の発見にくらべれば氷山の一角ですが、いま思えば、当時サマチャレの講義でわくわくとしながら聞いていた「沢山の未解明だった物理」です。たった、9年の間にこれらは当たり前の物理になりました。私を含め多くの人がサマチャレの講義や実験、友人に影響を受けて大学院の研究を選択しました。わたしの選択した「未解明の物理」は宇宙マイクロ波背景放射の偏光実験です。この実験は宇宙からやってくるBモードと呼ばれる特殊な渦の偏光模様を高感度の望遠鏡を用いて測定します。私も大学院の在学中に運良く「未解明の物理」だった、Bモードの初検出に立ち会う事ができました。
私がこの実験を知ったのはサマチャレに参加する友人が選択した、宇宙の温度を測定する実験でした。サマチャレ参加中に議論を交わしながら、現場の方に話を聞く間にすっかりこの実験の虜になってしまいました。結局、サマチャレへの参加が発端となり、最終的には宇宙マイクロ波背景放射のテーマで博士号を取る事になりました。
現在は海外の台湾の中央研究院で重力波の研究を行っています。当時の参加者とは今でも親交があり、頻繁に連絡をとりあっています。
サマチャレがあなたの研究人生に何かしらの影響を与える事は必至です。最先端の物理を学び、同期の仲間と議論し、学部生の夏に一生の思い出を是非ともつくりましょう!
大槻 太毅さん
京都大学人間・環境学研究科 助教(3期生)
私は2009年学部三回生のときにサマーチャレンジに参加しました。当時を振り返ってもやはりサマーチャレンジのプログラムは凄い。特に演習は学部生に対し最先端の施設を使い、さらに実験装置を一から立ち上げ物理現象を観測するという普通の大学生では味わえないような経験をすることができます。また、物理を学ぶ同世代の人たちとの出会いもサマーチャレンジの欠かすことのできない魅力の一つであると思います。私自身、物理を学ぶ同世代の仲間たちとの出会い、とても刺激を受けたことを覚えています(今でもそれは変わりません)。あれから時は経ち、博士号を取得し、研究者、そして教員としての日々を送っていますがサマーチャレンジに参加していなかったら今の自分とは大きく違っていたのではないかと思います。あの当時にサマーチャレンジに応募したことで世界が大きく広がったこと、それが自分の可能性を広げたこと、それは紛れもない事実です。新しい世界に踏み出すことはとても勇気がいることかもしれませんが、サマチャレスタッフの方たちやそこで出会う友人たちはその一歩を大きな一歩に変えてくれる力を持っていると思います。是非応募して、この夏を存分に楽しんで下さい!
西村 昇一郎さん
東京大学大学院理学系研究科物理学専攻(4期生)
サマーチャレンジへの参加をオススメする3つの理由。
1.ハイレベルな実験ができ、ハイレベルな講義を受けられる。
講義はもちろんのこと、演習は先生方やTAの学生がつきっきりで面倒を見てくれます。演習内容によっては短期間ながら卒業研究に勝るとも劣らない研究を行うことも出来ます。難易度はサマーチャレンジが始まる前の動作試験で修士の学生がかなり苦労するくらいです。実験のノウハウを一通り習得できます。
2.人生の分岐点になる。
今後の進路に大きく影響を受ける方がたくさんいます。参加した演習の分野、
先生方の話を聞くなどで、全く行くだろうとも思わなかった分野に進むことになるかもしれません。大学院に進学する際に所属を変える方も多くいるように感じます。また、周囲を見回してみると、サマーチャレンジ経験者は、
素粒子、物性にかかわらず、KEKやJ-PARCに実験しに舞い戻ってくることが多々あるようです。私もこれがきっかけで大学院からずっとKEKにいます。
3.人の繋がりが広がる。
これが一番大事。ものの考え方もてんでバラバラ、しかし、KEKに選ばれし(?)志を同じくする仲間と共に1週間強過ごすことになります。大学、分野の枠を超えた心強い味方を手に入れることができます。直近では大学院入試の際に情報や過去問、授業で使っている演習問題を貰ったり、中長期では研究内容(時に人生など)を相談出来たりします。
最後に、参加が決まった方、サマーチャレンジは講義に演習に明け暮れる毎日でとてもハードです。夜もそれなりに作業をしますので、体力に気をつけて下さい。また、期間中に仲良くなれるのは、せいぜい同じ演習班のメンバーくらいです。その後に開かれるであろう懇親会や卒業研究発表会でさらに親睦が深まります。そちらも開催が決まれば、ぜひご参加下さい。
沖中 香里さん
大阪大学大学院理学研究科物理学専攻(8期生)/2018.4より会社員
サマチャレでの学びは、それまでの三年間の大学での学びと同じくらい濃く充実したものでした!思いっきり物理について議論したり語ったりすることで、改めて自分の学んでいることへの興味関心が強まったと思います。また、他大学の学生と関わると、自分が知らない知識を持っていたり、深い考えを持っていたり…。もっともっと勉強しなければ、したい!!と刺激を与えてくれる仲間が全国にできました。
学部2,3年生で、教授の方にマンツーマンで指導してもらう機会もなかなかないと思います。少しでも気になっている人は、応募してみてほしいです。知識とか全然ないけど大丈夫かなという方も、まずは一歩、踏み出してみてください!
木野 秀俊さん
大阪大学大学院理学研究科物理学専攻博士課程前期2年(8期生)
サマーチャレンジに興味をお持ちのみなさん!こんにちは!
今年でサマーチャレンジも12回目になるそうで、サマチャレは10年を超える歴史をもつ日本最大級の研究スクールイベントです。
私は4年も前に参加した人ですが、今でもサマチャレにOB・OGとして関わりを持っています。そこで多くのサマチャレ卒業生と関わりました。サマーチャンジに参加する人の特徴として、熱意がある人が多いように思います。
チャレンジという名前がついているだけあり、期間中に様々なチャレンジがありますが、そこで役に立つのは頭のよさや要領の良さではなく、熱意や情熱です。どうか、尻込みせずにこの情熱のるつぼに飛び込んではいかがでしょうか!
水上 翔太さん
早稲田大学大学院 先進理工学研究科 物理学及応用物理学専攻(8期生)
大学の実験の授業では同じテーマで何日間も実験をすることは無いと思いますが、サマチャレでは一つのテーマで何日も集中して実験をして、仲間たちと徹底的に議論して考えつくして、自分たちで実験の方法を工夫していくという貴重な経験ができます。数式で書くととっても単純な事柄でも、実際に手を動かして現象を見ようとすると、想像以上に大きなギャップがあるものです。そういうところを試行錯誤しながら何とか解決して、データを取ってみるとなんと理論とぴったり一致した…!という感動を味わったり、あるいは全然うまくいかないのだけれどそこから新しい発見があったり…というのが実験の醍醐味だと思います。私はサマチャレに参加させていただいて、大学の授業などでは分からないそのような実験の楽しさに触れることが出来たと思います。 実はサマチャレに参加するまでは理論系に進もうと思っていたのですが、参加を機に実験系に進むことを決め、研究室では結局、実験と理論両方の研究を行っています。実験はそんなに得意ではないとか、理論系に行こうと思っている人も、まずは参加してみることをお勧めします。実験が楽しすぎて、実験系に変えようと思ってしまうかもしれませんよ。
安田 浩昌さん
東京大学大学院理学系研究科物理学専攻(8期生)
僕は第8回のサマーチャレンジに参加しました。僕の出身は地方の大学だったため、長期間にわたって行う実験が少なく、そもそも素粒子実験に関連した実験室がありませんでした。そのような環境において、サマーチャレンジへ参加した経験というのはとても良い刺激となりました。約10日間にわたる講義や演習、見学を通して普段の環境では見ることも感じることもできない世界を肌を通して味わうことができたのは非常に貴重な経験でした。その結果、僕自身は素粒子実験がある他大学へと進学することを決め、なんだかんだとこの業界に居座っています。
さて、長くなりましたが、これを見ているあなたは少しでも興味があって見ているのではないでしょうか?もしそうなら、是非サマーチャレンジに参加してみてください。この経験はあなたにとって絶対に良いものとなるはずです。サマーチャレンジへの参加資格は物理に対する興味だけです。知識や技術についてはTAやスタッフが全力でサポートしてくれます。ぜひ、悔いのないよう、楽しんでください。