理論か実験か…、自分の適性を判断したかった
東京大学理学部物理学科の3年生のときに参加しました。先輩方から「サマチャレは良いぞ!」と聞いて興味を持っていました。自分の進路を考えたときに、理論系か実験系か悩みもあり、サマチャレに参加することで実験研究への自分の適性を判断できるかなと思って参加しました。
思い出に残るのはやはり、自分が関わった演習です。齋藤健治先生の高周波超伝導加速空洞の実習で、超伝導という物性の実験をして相転移を目の当たりにしつつ、それが素粒子実験の実験系作製の基礎にもなるのを体感できたのは、とても楽しかったです。同じ演習班の仲間とあれこれ議論したり、実験を試行錯誤する中で、自分自身は実験研究を楽しめると確信を持てたように思います。そして、懇親会での親睦。サマチャレで知り合った友人たちや大学の同期が、子どものように勢いで粒子になりきってお互いに衝突し合ったりして、「加速器実験」をしていたのをよく覚えています。
学部卒業後は、非平衡物理の実験研究室に進学し、博士号を取得後にフランス・パリのパスツール研究所で生物物理の実験をしていました。2024年からは、東京科学大学理学院物理学系の准教授として独立した研究室を主宰しています。テーマは非平衡統計物理学ですが、なかでもアクティブマターという、生き物や動く粒子の集団=“群れ”のダイナミクスに普遍法則を見出そうという実験に取り組んでいます。
大学院時代に若手の物性研究者がセミナーなどを通して交流を深める「物性若手夏の学校」に参加し、またその運営にもたずさわったことがありますが、そこでサマチャレ同期と再会し、仲を深めることもできました(ここで妻にも出会いました)。「夏の学校」では自分が話を聞きたい先生を講師に招くことができるので、自分と近い興味を持つ日本中の学生が参加してくれて、その人たちとのつながりが得られるという魅力もありました。
仲間との切磋琢磨は、自分づくりに欠かせないもの
ポスドクのときや現職の准教授になってからも、同僚や周囲にサマチャレ出身者がいて、参加年が異なっていても共通する友人などがたくさんいることから話が弾むことがよくあります。たとえば、この特設サイト「サマチャレ20年特集・卒業生メッセージ」に寄稿されている島袋さんとは、パリでポスドクをしているとき出会いました。同じ国際大学都市内の建物の同じフロアで暮らしていたことがあり、若手の物理研究者で集まる勉強会を一緒に開催していました。YouTuberを始める前のヨビノリたくみさんとは「物性若手夏の学校」で出会い、分野も近かったことからその後も継続して交友があります。最近は、私含めて同期が子育て世代になったためにあまり飲み会などもできませんが、たびたび集まったり、SNS等で交流することが今でもあります。みんな、アカデミアや民間企業等の各所で活躍されている方々ばかりです。私にとってサマチャレは、実験系の研究室に進学するという自分の進路選択を後押ししてくれるものであったように思います。同時に、サマチャレの参加年が違っても、時空を超えた長期にわたる人的ネットワークを提供してくれる、人生を豊かにし続けてくれるものと感じています。
異なる大学、異なる分野(学科)、異なる興味をもつ多くの人に出会えるサマーチャレンジなどの場は、自分の進路を考える上でも非常に有意義なものです。今も昔も、「すごいヤツに出会う」あるいは「オレのほうがすごいじゃん」といった感覚を持つ、そういう経験は人生選択の上で非常に役に立つのではないかと思います。まったく違う発想や、自分が面白いと思えることに気づくこともあります。また、あの分野に進もうとしているアイツには叶わないけども、自分の興味のあるこっちの分野に進めば自分なら人一倍頑張れる、といった感覚をつかむ上でも、多くの人と交流することは大切です。
今は、AIに聞いたら理学書の分からないところなども解説してくれるので、講義を聞きにいかなくても勉強はできるところはあるかもしれません。でも、同世代との交流はやはり自分の将来像を考える上で欠かせないものです。学生同士の出会いや切磋琢磨の機会、学生同士の議論の話題を提供することが、サマチャレなどスクールの存在意義の一つだと思っています。
