島袋隼士さん

サマーチャレンジは、色あせない「青春」のひとコマ

東北大学宇宙地球物理学科天文学コースの3年生だった2009年の第3回のサマチャレに参加しました。実は大学2年生だった2008年にも応募したのですが、残念ながら当選しなかったため、2度目の挑戦でした。参加動機は、全国の物理が好きな同世代の人々と交流したいという気持ちからでした。

立教大学の村田次郎先生の「実験スケールでの万有引力の法則の検証」に参加しました。約1週間、がっつり実験に打ち込み、データ解析などを行ったことが今でも記憶に残っています。演習や講義はもちろん印象に残っていますが、自由時間の友人たちとの語らいはさらに楽しいものでした。物理好きが集まっているので、「将来、どういう研究をしたいか」などの話題で盛り上がりました。

サマーチャレンジの演習の様子

同じ場所にやる気に溢れた同世代が集まって語らうことは、非常に刺激的で、「この人たちに負けないくらい頑張ろう」という気持ちになったのを覚えています。そういった刺激を受けることで、大学に戻った後も頑張ることができたので、結果的に大学院合格やその後のキャリアにサマチャレは活かされたのではないかと思っています。大人になると、なかなか「青春」をすることはできません。しかし、サマチャレは大学生活における青春のひとコマであり、参加してから15年以上経った今でも、色あせない貴重な思い出となっています。

博士号を取得後、パリや北京でポスドクを経験した後、現在、中国の雲南大学で准教授を務め、天文学、特に観測的宇宙論と呼ばれる分野の研究をしています。研究内容はざっくりというと、「宇宙138億年の歴史」の中で、空白に包まれた「宇宙暗黒時代や宇宙の夜明け」と呼ばれる、宇宙に星や銀河の存在しなかった時代から現代に至るまでの宇宙の変遷について研究しています(詳しくは『宇宙暗黒時代の夜明け』参照)。

若い頃から人との関わりを大切にしてほしい

サマチャレで得た最も価値あるものは、「人との縁」です。サマチャレで紡がれた縁は今でも続いており、時折、同じく研究者になった友人と飲んだりしています。そこで、色々な情報交換を行ったりしています。民間企業に就職した友人たちもいますが、同様に今でも関係が続いています。サマチャレは長く続く友人を見つけることができる場だと思っています。

研究の世界においても、人との関わりは非常に重要です。「研究者にはコミュニケーション能力は必要ない」と考える人もいるかもしれませんが、実際にはその逆です。研究者には、国籍や文化的背景の異なる人々と協力し、自分の考えを正確に伝え、相手の意見を理解する能力が求められます。

私がパリで生活していたときには、国ごとの違いを残しながらも、ヨーロッパという枠組みの中で、歴史や社会制度、文化的な背景の一部を共有しているように感じることがありました。そのような環境に入り、異なる背景を持つ人々と対話するためには、外国語を使えるだけでは十分ではありません。自分自身がどのような文化や歴史の中で育ち、どのような価値観を持っているのかを理解し、それを相手に説明できることも重要です。

国際的な研究環境では、理系・文系の区分はあまり意味を持ちません。研究能力に加えて、歴史、文化、社会、政治、言語などに対する幅広い理解が、人との信頼関係を築き、研究を円滑に進める上で役立ちます。研究者として成長するためには、専門分野の知識を深めるだけでなく、研究以外の分野にも目を向け、自分の考え方や人間としての幅を広げていくことが欠かせません。

研究者を志す学部生の皆さんには、人との縁を大切にしてほしいです。研究者の進路や研究テーマは、あらかじめ計画した通りに決まるとは限りません。授業、研究会、学会、留学先などで出会った人との何気ない会話が、共同研究や進学、就職、新しい研究分野へとつながることがあります。自分の研究に真剣に取り組み、相手の仕事にも関心を持ち、依頼されたことを丁寧に行う。その積み重ねによって、「この人と一緒に研究したい」と思ってもらえる信頼が生まれます。研究の世界は広いようで狭く、日頃の姿勢や仕事の仕方は、想像以上に長く記憶されます。

皆さんにはぜひ目の前の出会いを大切にし、誠実に研究と人に向き合うことが、結果として将来の大きな縁につながることを胸に留めて、サマチャレに参加してもらいたいと思っています。

関連情報

公式サイト:第20回大学生・高専生のための素粒子・原子核スクール サマーチャレンジ
https://www2.kek.jp/ksc/index.html

特設サイト:サマーチャレンジ20年 記念サイト
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