LHC高輝度化アップグレードのためのD1実機磁石最終号機が到着

欧州原子核研究機構(CERN)の大型ハドロン衝突型加速器(LHC)では、衝突頻度を飛躍的に向上させることを目指した高輝度化アップグレード計画(High-Luminosity LHC, HL-LHC)が進められています。この計画への日本の貢献の一環として、超伝導低温工学センターは、ビーム分離双極超伝導磁石(D1磁石、MBXF)の開発を担当しています。これまでの取り組みについては、過去のハイライト記事や素核研トピックスで紹介されています[1]-[5]。この磁石は、LHC加速器の2つの主要な衝突点(ATLAS、CMS)の前後に設置され、対向する2本のビームを衝突点に向かって同一軌道上に位置するよう調整し、さらに衝突点通過後に2本のビームを分離する役割を果たします。コイルには、ニオブ・チタン超伝導ケーブルが使用されています。直径0.57 m、長さ7 m、重さ12トンというスケールの円筒形の磁石で、150 mmの磁石の口径内に5.6 Tの磁場を発生させます。実証機1台と実機6台が国内メーカーで製造され、CERNに輸送されます。
製造途中で磁石は一旦KEKに輸送され、性能評価試験が行われます。6月末に、D1実機磁石6台のうち、最終号機がKEKに到着しました。図1は、第4低温棟にある深さ9 mの縦型クライオスタットに挿入するために、磁石を起立する作業中の写真です。磁石を液体ヘリウムにより1.9 K(-271℃)まで冷却した後、最大13230 Aまでの通電試験や発生磁場精度の測定などが行われる予定です。これまでの実機磁石5台については、試験結果に問題はなく、仕様を満足する性能を示すことが確認されています。

図1 : クライオスタット挿入のために起立作業中のD1磁石実機6号機