加速器科学や素粒子物理の研究推進には、非常に高度な技術が求められます。それらの要請に応えるために、これまで様々な技術が生み出され、それらが多岐にわたる分野に応用されることで、技術革新の源泉となってきました。
加速器科学や素粒子物理の研究推進には、非常に高度な技術が求められます。それらの要請に応えるために、これまで様々な技術が生み出され、それらが多岐にわたる分野に応用されることで、技術革新の源泉となってきました。
ILCの第一のインパクトは、重要な科学的成果です。究極の自然法則の解明を目指す素粒子物理学は、今、大きな岐路に立っています。
「未知の解明」のページにあるように、「新たな次元」の道、「より深い階層」の道、「複数宇宙、あるいは新しい原理の存在」の道のどれが正しい道なのか、あるいは、今まで想像もできなかったような道が拓けるのか、ILC実験の結果により進むべき方向が決まります。
その実験結果によって、素粒子物理学の未解決の謎である、「強い力、弱い力、電磁気力、重力という自然界の基本的な力が統一されるのか」、「クォークやレプトンの多様な性質はどうして決まったのか」、「暗黒物質や暗黒エネルギーの正体は何か」 といった問いへの解答が違ってきます。ビッグバンにより宇宙が誕生して次第に冷えていく過程で、どのように現在の姿になったかを解明するためには、素粒子物理学の正しい道を知る必要があるのです。
第二のインパクトは、人を引き付け、人を育てることです。ILCは世界最先端の科学と技術を結集して初めて可能になる研究施設です。世界中の科学者、技術者がボーダーレスに協力します。実験施設の建設、実験の実施のためには、常時数千人の人々が、ある時はそれぞれの国の研究施設で、ある時はILC実験施設に集まって共同研究、共同作業を長期間にわたって続けることになります。
毎年多くの大学院生や若い研究者が世界中から参入します。プロジェクトで育つ人材は、次世代の素粒子実験分野を支える研究者だけではありません。高度な基礎科学プロジェクトを経験した人材は、他分野の科学や技術の世界、産業界、国際機関等で活躍の場を広げることができます。ILCはまさに世界の人材育成拠点となるのです。
日本がこのような高度な人材を世界に輩出する拠点を持つことは、大きな国際貢献といえます。ホスト国の責任を担う人材が日本から多く育成され、日本が科学の世界で国際社会をリードする絶好の機会になります。
また、ILCは究極の自然法則の解明を目指す、世界で最も進んだ研究施設となります。このような施設が身近にあることは、子供たちに夢を与えることになるでしょう。その中から、素粒子物理学に限らず、次世代の科学者が育ってくれることを願います。
第三のインパクトは、ILCの技術的、経済的な波及効果です。加速器施設や実験施設のための測定器は様々な技術を集めて作られます。これまでも、加速器技術、測定器技術、また実験解析のための情報技術は、医療、産業、情報通信など広い分野に応用されてきました。世界最先端の技術を集めて初めて可能になるILCは、さらなるイノベーションの源泉になることが可能です。