「はやぶさ2 」微粒子分析
2020年12月にJAXAの小惑星探査機「はやぶさ2」が持ち帰った小惑星リュウグウの試料は、2021年6月から1年間、6つの初期分析チームによる分析が行われます。初期分析チームのうち「石の物質分析チーム」「固体有機物分析チーム」がKEK物質構造科学研究所(物構研)の実験施設で分析を行います。
「石の物質分析チーム」は東北大学の中村智樹教授がリーダーを務め、リュウグウの形成過程解明に向けた分析を行います。その初期段階で物構研の量子ビーム2種3手法が用いられます。ひとつは、小惑星探査機「はやぶさ」が持ち帰った小惑星イトカワの分析でも使われたフォトンファクトリー(PF)の精密X線回折、もう一つは、PFの軟X線によるX線顕微鏡STXM、さらに、今回初めてサンプルリターン試料の分析に使用されるJ-PARC 物質・生命科学実験施設MLFの負ミュオンによる元素分析です。
「固体有機物分析チーム」は広島大学の薮田ひかる教授をリーダーに、リュウグウ試料の有機物を分析することによって、宇宙で生命材料物質がどのように作られたかの解明を目指します。このチームもPFのSTXMを活用し、試料に含まれる有機物の化学組成を調べます。
リュウグウのような小惑星は、過去に地球に降り注いで地球上に水や有機物をもたらしたのではないか、と考えられています。初期分析チームそれぞれの分析結果を総合することで、地球に命が誕生したという大きな謎の解明に近づきます。