い
- 「石の物質分析チーム」
- はやぶさ2プロジェクト 初期分析チームの一つ。チームリーダーはフォトンファクトリーおよびJ-PARC MLFユーザーの東北大学 中村 智樹 教授。
- 「イトカワ」
- 小惑星探査機「はやぶさ」が目的地とし、その試料を持ち帰った小惑星。
- イメージングプレート(IP)
- 特殊な蛍光体をプラスチックフィルム上に塗布したもので、デジタルデータが得られ、X線フィルムよりも高感度。データを消去して再利用が可能。
う
- 「宇宙科学研究所(宇宙研)」
- 宇宙航空研究開発機構(JAXA)の研究所。
- 「宇宙航空研究開発機構(JAXA)」
- 宇宙航空研究開発機構法に基づく国立研究開発法人。2003年10月1日、宇宙開発事業団(NASDA)、宇宙科学研究所(ISAS)、航空宇宙技術研究所(NAL)の3機関が統合し誕生した。
- 宇宙塵
- 太陽系の惑星間空間に分布する固体の微粒子。多くは直径0.1mm以下。地球に年間4万トン程度落下している。
え
- 衛星
- 惑星や準惑星・小惑星の周りを公転する天体。
お
- 「大型放射光施設(SPring-8)」
- 兵庫県にある世界最高性能の放射光を生み出すことができる大型放射光施設。SPring-8の運営は国立研究開発法人理化学研究所(理研)が行い、SPring-8の利用促進業務は公益財団法人高輝度光科学研究センター(JASRI)が行っている。
か
- 火星衛星探査計画
- JAXAが計画している世界初の火星衛星サンプルリターンミッション。2024年度打上げを目指している。
- 含水鉱物
- 水を成分として含む鉱物。
- ガンドルフィカメラ
- 試料を二軸で回転させることができる仕組みの撮影装置。東北大学の中村教授のグループはフォトンファクトリーBL-3Aで利用している。
き
- 軌道
- 天体が運行する道筋。
- 揮発性
- 蒸発しやすい性質。
- 共同利用
- ここでは、個々の大学や企業では維持が難しい大型実験施設を一定のルールのもと希望者が使うことを指す。物構研は大学共同利用機関の一つ。
- 近赤外線
- 電磁波の可視光より波長が長い光のうち可視光に最も近い領域の光。 波長は0.7~2.5 µmで、赤外線通信などに使われる。(ご参考:波長)
- 近地球小惑星
- 地球に接近する軌道を持つ小惑星。
け
- 蛍光X線
- 物質にX線をあてると、原子内の電子が励起され、その後元に戻るときに元素固有のエネルギーを持つX線を放出する。これが蛍光X線で、これから元素の情報を得ることができる。
- 結晶
- 原子や分子などが規則正しく並んだもの。
- 結晶構造
- 結晶中の原子などの並び方のこと。同じ原子や分子でできていても、結晶構造が異なると性質が異なる。結晶構造はX線回折法などさまざまな分析手法によって調べることができる。
- 原始太陽系星雲
- およそ45億7千万年前にでき太陽系のもとになった円盤上の星雲。中心に原始太陽があり、まわりに薄いガスとチリの円盤があったとされる。
- 元素組成
- ある物質にどんな元素がどのくらいの割合で含まれているか。
こ
- 鉱物
- 自然にできた無機物。
- 「固体有機物分析チーム」
- はやぶさ2プロジェクト 初期分析チームの一つ。チームリーダーはフォトンファクトリー ユーザーの広島大学 薮田 ひかる 教授。
- コンドライト
- 岩石質の隕石のうち、コンドリュールと呼ばれる球粒の鉱物を含んだもの。溶融を経験していないとされる(始原的な隕石)。
し
- 紫外線
- 電磁波の可視光より波長が短い光のうち可視光に最も近い領域の光。 波長は200~400 nmで、殺菌などに使われる。波長10~200 nmの光は真空紫外線と呼ばれる。(波長の図を参照)
- 始原的な隕石
- 巨大な天体になったことがなく一度も融けていない隕石。未分化の隕石ともいう。
- 実験ハッチ
- 放射線防護のためにビームラインに設けられた金属製の部屋。
- 重水素
- 元素記号H、原子番号1、質量数2の元素。重水素D=(陽子)+(中性子)+(電子)
- 収束イオンビーム(FIB)
- →FIB
- 小惑星
- 太陽系のうち、太陽と惑星8つ、準惑星5つ、彗星・惑星間塵を除く天体のこと。小惑星は現在までに100万個超が確認されている。
- 小惑星帯
- 火星の軌道と木星の軌道の間にある、太陽系の小惑星の大部分が集中する場所。雪線はそのあたりにあった。
- 「初期分析チーム」
- はやぶさ2プロジェクトの初期分析は、日本を中心に14カ国、109の大学と研究機関、269名が参加する国際チームで進める。初期分析チーム全体の統括は東京大学の橘 省吾教授が担当し、6つのサブチームがある。
(ご参考)初期分析チーム
- 真空封止アンジュレーター
- 放射光の光源リング上、電子の通り道に特殊な磁石を挿入することで電子を細かく蛇行させ、より強力な放射光を出させる仕組み。電子の通り道は真空で、磁石ごと真空中に入れたのでこの名前がついた。
- 親石元素
- ケイ酸塩に親和性を示す元素。1923年「現代地球化学の父」とよばれるゴルトシュミットが周期表における元素の地球化学的分類を発表し、親鉄元素・親銅元素・親石元素・親気元素の4つのグループに分類できる元素があることを示した。
- 親鉄元素
- 鉄やニッケルに親和性を示す元素。
す
- 彗星
- 観測されたときにコマや尾などの物質の蒸発が見られる小天体。小惑星との区別は難しいことがある。
- 水素
- 元素記号H、原子番号1の元素。重水素に対して軽水素と呼ばれる。水素H=(陽子)+(電子)。
- 水素同位体比(D/H)
- ある物質中の重水素と水素の存在比。
- スティクサム
- →STXM
- スペクトル解析
- データを波長(周波数)によって分けて解析する手法。
せ
- 雪線
- 原始太陽系で、水が水蒸気になるか氷になるかの境界線。原始太陽系円盤の温度が水の昇華温度(約170 K)になるところ。
そ
- 走査型透過X線顕微鏡(STXM)
- →STXM(スティクサム)
た
- 「大強度陽子加速器施設(J-PARC)」
- 高エネルギー加速器研究機構と日本原子力研究開発機構が茨城県東海村で共同運営している大型研究施設で、素粒子物理学・原子核物理学・物性物理学・化学・材料科学・生物学などの学術的な研究から産業分野への応用研究まで、広範囲の分野での世界最先端の研究が行われている。J-PARC内の物質・生命科学実験施設MLFでは、世界最高強度のミュオン及び中性子ビームを用いた研究が行われており、世界中から研究者が集まる。
- 太陽系
- 現在、太陽のまわりを回る天体は惑星8つ、準惑星5つ、太陽系小天体(小惑星・彗星・惑星間塵など)多数。小惑星は現在までに100万個超が確認されている。 惑星などのまわりを回るものは衛星と呼ぶ。
- タッチダウン
- 小惑星サンプルリターンミッションで、探査機が小惑星に降り立つこと。
- 炭酸塩鉱物
- 方解石などの炭酸イオンを含む鉱物。炭素質球粒隕石に含まれていることが多い。
- 炭素
- 元素記号C、原子番号6の元素。有機物の原料。
- 炭素質球粒隕石
- 岩石質の隕石の中でも炭素や揮発性の成分を多く含む。C型小惑星に対応する。
ち
- 地球外物質
- 地球ができた後、地球の外からやって来た物質。隕石、宇宙塵、小惑星リターンサンプルなど。
- 蓄積リング
- 電子を閉じ込めて周回させる円形加速器の一つ。放射光実験施設では、直線加速器で加速した電子を蓄積リングに送り込み、リング内の電磁石で進路を曲げ放射光を取り出しながら周回させている。
- 中性子
- 原子核を構成する粒子の一つ。電荷はない。
て
- 電子
- 素粒子の一つ。原子を構成する粒子の一つで、負の電荷を持つ。
と
- 同位体組成
- 同じ元素でも、中性子の数が異なるため質量が異なる原子を互いに同位体という。化学変化が起きると元素組成は変わるが、同位体組成は変わりにくく、物質に特有の指標となる。
- 透過型電子顕微鏡
- 十分に薄い試料に電子ビームを透過させてその投影像を得たり、回折像を得る顕微鏡。条件が揃えば原子を見分けることができる解像度をもつ。近年ではタンパク質の分析に特化したクライオ電子顕微鏡も普及している。
な
- 軟X線
- 電磁波の真空紫外線より波長が短い光のうち真空紫外線に最も近い領域の光。フォトンファクトリーのSTXMには軟X線が使われている。(波長の図を参照)
ね
- 粘土
- 非常に細かい粒子で構成された土。乾燥すると層状になる。
は
- 波長
- 波の性質をもつものの1周期分の長さ。光(電磁波)の波長はエネルギーと反比例する。(ご参考 近赤外線、紫外線、軟X線)
(ご参考)ものの大きさと光の種類
- 「はやぶさ」
- 2003年5月9日に打ち上げられ、2005年11月26日に小惑星イトカワに着陸。2010年6月13日に地球へ帰還し、搭載カプセルを落下させ運用を終了した。
- 「はやぶさ2」
- 「はやぶさ」の後継機。2014年12月3日に打ち上げられ、2018年6月27日に小惑星リュウグウに到着。2019年11月13日にリュウグウを出発し、2020年12月6日カプセルが地球に到着。拡張ミッションに向けて地球から遠ざかった。
- 反射スペクトル
- 物質の表面で反射した光を分析し、横軸を波長、縦軸を強度で描いたグラフ。惑星科学分野では、小惑星などが太陽光を反射した光を地球から望遠鏡で捉え、その形によって表面の材質を分析する。
ひ
- ビームライン
- 量子ビームの通り道。番号などをつけて実験装置を含めた実験エリアを指すこともある。
ふ
- 「フォトンファクトリー(PF)」
- KEKつくばキャンパスにある放射光実験施設の愛称。1982年3月11日初めての放射光が観測された。はやぶさ2初期分析チームのうち2つのチームがPFを利用して分析を行う。
- 不活性ガス
- ヘリウム・アルゴンなど希ガスや、窒素など化学反応を起こしにくい安定な気体。
- 普通球粒隕石
- 岩石質の隕石のうち、金属を多く含むもの。S型小惑星に対応する。
- 物質科学
- 原子が多数集まった物質の構造や性質を研究する学問分野のこと。
(参考)KEK キッズサイエンティスト「物質科学そして物質構造科学」
- 「物質構造科学研究所(IMSS)」
- KEKの研究所のひとつ。大学共同利用機関として1997年4月1日に設立された。電子加速器から発生する放射光や陽電子、陽子加速器によって作り出される中性子やミュオンなどの量子ビームを利用し、原子レベルから高分子、生体分子レベルにいたる幅広いスケールの物質構造と機能を総合的に研究している。略称は「物構研」。
- 「物質・生命化学実験施設(MLF)」
- KEK東海キャンパス J-PARCにある中性子とミュオンの実験施設。はやぶさ2初期分析チーム「石の物質分析チーム」が負ミュオンを使った分析を行う。
- 負ミュオン
- →ミュオン
- プローブ
- 探針。検出器の対象に触れる部分。転じて、分析に使う量子ビームを指す。
- 分化
- 惑星が形成されるとき、高温のため融けた惑星の原材料が分離し、内核・外核・マントルに分かれること。
- 粉末X線回析
- 粉末状の結晶にX線を当て、回折像を得る分析法。X線回折パターンによってどんな結晶なのかが分かる。
ほ
- 放射光
- 大型の加速器によって生み出されるX線。高速の電子が進行方向を曲げるとき接線方向に放射される。
- 放射性元素
- 自発的に放射線を出す性質を持つ元素。放射線を出しながら別の元素に変化することを放射性崩壊という。放射線のエネルギーが周囲を加熱する。
ま
- マグマオーシャン
- 惑星が形成されるとき、地表を覆っていたと考えられているマグマの海。
- マルチプローブ
- 一つの研究対象に対して、複数の異なる量子ビームを用いて研究すること。例えば、石の物質分析チームはリュウグウ試料に対して放射光とミュオンを使うマルチプローブ研究を行う。
み
- 「ミュオン科学実験施設(MUSE)」
- J-PARC MLF内のミュオンの実験施設。物質構造科学研究所ミュオン科学研究系が運営している。
- ミュオン
- ミューオン、ミュー(μ)粒子ともいう。電子の約200倍の質量をもつ素粒子であり、電子と同じ大きさの電荷をもつ。正電荷をもつものを正ミュオン、負電荷をもつものを負ミュオンとよぶ。
- ミュオンX線
- 物質に打ち込まれた負ミュオンが原子核に近づくときに失う運動エネルギーが光エネルギーになったもの。物質によって固有のエネルギーをもつので、元素分析に利用される。
む
- 無機物
- 有機物以外の化合物。
ゆ
- 有機物
- 炭素を含む化合物で一酸化炭素COや二酸化炭素CO2以外のもの。生命体の構成物。
よ
- 陽子
- 原子核を構成する粒子。正電荷を持つ。
り
- 「リュウグウ」
- 小惑星探査機「はやぶさ2」が探査した小惑星。地球の近くに軌道を持つC型小惑星。
- 量子ビーム
- 例えば電子や陽子など、粒と波の性質をあわせ持つ小さなものを量子という。加速器などを使って量子をビーム状にすると物質を観察するための探針(プローブ)となる。放射光、中性子、ミュオン、低速陽電子などがある。
れ
- レーダー観測
- 発射した電波の応答を調べることで遠くにあるものを観測する手法。気象観測などで使われる。
わ
- 惑星
- 太陽系の太陽を回る天体のうち、丸く、周りの天体よりもけた違いに大きいもの。太陽から近い順に水星(Mercury)、金星(Venus)、地球(Earth)、火星(Mars)、木星(Jupiter)、土星(Saturn)、天王星(Uranus)、海王星(Neptune)の8つ。
B
- BL-3A
- フォトンファクトリーにある精密単結晶X線回折ステーション。
- BL-19A
- フォトンファクトリーにある軟X線顕微・分光実験ステーション。
C
- C型小惑星
- 小惑星帯に最も多く、岩石中に有機物や水など生命関連物質を含むと推定される小惑星。炭素質球粒隕石に対応する。一般に太陽光の反射率が低く、暗く見える。cはcarbonaceous (炭素質の)に由来。
D
- D2
- ミュオン科学実験施設にあるミュオン基礎科学実験装置。正負のミュオンを用いて基礎物理から非破壊元素分析まで多彩な研究が行われている。
(ご参考:Muon D2 ミュオン基礎科学実験装置)
F
- FIB
- 集束イオンビーム装置(FIB; Focused Ion Beam system):Ga+イオンビームを試料に当て、表面形状の観察をしながら0.1 µm程度の精度で加工を行う装置。
I
- IMSS
- Institute of Materials Structure Scienceの略。→物質構造科学研究所
- IP
- →イメージングプレート
J
- JAXA
- Japan Aerospace Exploration Agencyの略。→宇宙航空研究開発機構
- J-PARC
- Japan Proton Accelerator Research Complexの略。→大強度陽子加速器施設
M
- MLF
- Materials and Life Science Experimental Facilityの略。→物質・生命化学実験施設
- MMX
- Martian Moons eXplorationの略。→火星衛星探査計画
- MUSE
- MUon Science Establishmentの略。→ミュオン科学実験施設
N
P
- PF
- →フォトンファクトリー
S
- S型小惑星
- 岩石が主成分と推定される小惑星。普通球粒隕石に対応する。c型小惑星よりも明るく見える。sはstony(石質の)に由来。
- STXM
- 走査型透過X線顕微鏡(STXMスティクサム; Scanning Transmission X-ray Microscope):集光したX線を試料上で走査したりエネルギーを変化させて、透過したX線の強度を調べ、元素や化学種の分布や吸収スペクトルを得る分析方法。
X
- X線回折
- 結晶にX線をあてると波の性質により結晶の並び方に応じた斑点やリング状の像が得られる。これを回折像と呼び、解析することで結晶の情報が得られる。