キッズサイエンティスト【物質科学そして物質構造科学】

風が水面から水蒸気を運び、雲がわき、そして、雨や雪が降る。人間は、刻々と変わる森羅万象の自然の中で、さまざまな現象に遭遇し、ある時は驚き、ある時は畏敬の念を持って暮らしている。それらの現象は、一定の法則の下に物質が姿を変えゆく過程である。その複雑な過程を解き明かす作業は、優れた謎多き推理小説を読むに似た面白さがある。人間が手で取り扱える程度の物質の”かたまり”の構造や性質を研究する科学を「物質科学」と呼び、特に、その”構造”に着目し、ここから「物質科学」の諸問題を解き明かしていこうとする科学を「物質構造科学」という。

物質を構成する原子について科学的な解明がなされたのは、20世紀になってからである。自然界に存在する元素の最小単位である原子の存在と構造が発見され、原子の世界を支配する物理法則である量子力学も確立されたのである。今日、これらの基本的概念を疑う人は少ない。しかしながら、物質の構成要素がわかり、それらの運動の基本法則が量子力学であるとわかっていても物質の性質を完全に記述することは極めて困難である。それは物質科学の対象が、莫大な数の分子・原子の集団だからである。そこでは、構成する要素間の複雑な相互作用によって生じる多様な協力現象こそが、物質の本質的な性質を決めている。その無限の広がりを持つ多様さ故に物質科学では、留まることなく、新しい物理現象や有用な性質をもった物質が発見され、常に、生き生きとしたニューフロンティアが創り出されている。最近では、形状記憶合金、太陽電池、アモルファス、高性能磁性体、超伝導材料等の物質を生み出し、直接、人間生活の向上に大きな貢献をもたらすとともに、生命構成物質の基礎研究を通して、生命現象の解明に向けた新たなる挑戦を始めている。

物理、化学、生物、工学そして医学、広範な今日の物質科学の発展を反映し、その構造研究は、水とか鉄のような単純な小さい構造から高分子物質や生命構成物質のような複雑な大きい構造、ミクロからマクロにわたる広いスケールの構造を研究対象としてきている。また、物質の性質をさらに正確に理解するために、格段の進歩を遂げている放射光や、各種の粒子線等を使って、物質の構成要素である原子、分子、電子、イオンの構造や運動のすべてを総合的に研究することが切望されている。物質構造科学研究所は、機構のもと、放射光、中性子、陽電子、ミュオンを発生させ、現代の物質構造科学研究に必要とされる”広いスケールの構造研究”そして”総合的構造研究”を可能とした世界最初の研究所で、ここから、また、新しい科学のフロンティアが生み出されようとしている。



研究者にインタビュー
素粒子原子核の研究って何?
物質構造科学の研究って何?
加速器とは?・・・VRML
ごあいさつ

物質科学そして物質構造科学
物質科学そして物質構造科学−構造と現象
放射光研究施設−光と物質科学
放射光研究施設−研究分野
放射光研究施設
放射光研究施設−軌道秩序の直接的観測
蛍光X線/単色X線
中間子科学研究施設
日英中性子散乱研究協力事業
ミュオンによる広域中間子科学の研究

copyright(c) 2008, HIGH ENERGY ACCELERATOR RESEARCH ORGANIZATION, KEK