光とは、電場と磁場が一体となって振動する波(電磁波)で、波長によって下の図のように分類されている。
可視光は、波長が4〜7x10-7mのもので、波長に従って七色に変化する。それより波長の長いものには赤外線やラジオ波などがあり、通信などに利用されている。短いものには、紫外線やエックス線などがあり、医療や工学に、さらに分子・原子レベルの物質構造の解明に役立っている。
光で物質を研究するには、研究対象がミクロになるほど短い波長の光を選ばなくてはならない。
極めて小さな物を見るには光学顕微鏡がよく用いられるが、いくら性能の良い顕微鏡でも分子・原子を直接見ることはできない。なぜなら可視光の波長は分子・原子の大きさの数千倍もあり、もはや物体の位置や形状を判別できなくなってしまうからである。
光が物質にあたると屈折・吸収・反射・散乱・回折などがおこる。光を受けた物質内では電子状態の変化がおこり、その結果、電子が飛び出したり、化学結合が切れて分子や結晶が壊れたり、発光したりする。これらの光と物質の織り成すドラマには、すべて物質の特性や構造が深く関わっている。従って光は物質を知る鍵である。
光と物質が最も強く相互作用する領域、それが放射光(波長10-7〜10-11m、フォトン・エネルギー10〜10万電子ボルト)の領域である。
極紫外線からエックス線に至るこの短波長の光、これで見えるのは物質の内部の姿であって、我々が眼で見えるような色や形ではない。しかし、我々はさまざまな測定器を駆使してこのドラマを「見る」ことができる。
この領域では放射光にまさる光源はない。太陽や宇宙からのこの波長領域の光はすべて大気に吸収されて地上には届かない。20年前に、電子加速器を光源として用いることができるようになって、人類は初めてこの領域の放射光による本格的な研究を開始したのである。



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