巻末付録 点字本のつくり方

巻末付録 点字本のつくり方

『宇宙と物質の起源』(講談社ブルーバックス)の巻末付録を、講談社様のご厚意により以下に転載いたします。

  1. 原稿から点字データ変更用のテキストデータを作成

執筆者らが、本文データと、専門用語の読み方のデータを
提供しました。一般の図書を点訳する場合には、スキャナと
OCRという文字認識ソフトを用いて、点字データ変換用のテ
キストデータを作成しています。

2.点字データに変換
自動点訳ソフトを用いて、点字データに変換します。

3. 原稿から点字データ変更用のテキストデータを作成

3.1 点字データの校正

自動点訳ソフトによる誤変換の修正、点訳ルールによる分かち書き(語の区切りをあける)・切れ続き(解読しやすくするために長い文節を区切る)・数式表現の修正、レイアウトの調整、ページの割り付けなどをします。この作業は点訳者2名が行いました。

3.2 触読校正者による校正

点訳者が仕上げた点字データを、全盲の解読者が点字ディスプレイで読み、校正を行います。

4. 触図の作成

「触図」は手で触って理解する図です。点字プリンターで作成する点図(点のみで表現する図)と立体コピー機で作成する触図(点と線などで表現する図)があります。執筆者らが原図のデータを提供しました。

 

本書の図1‒4、ナトリウムの電子配置図を点図にするとこのようになる

本書の図1‒4、ナトリウムの電子配置図を点図にするとこのようになる

4.1 作図方法の検討・試作
本書に出てくる図について、点図と立体コピー機による触図のどちらで作成したほうが分かりやすいか、検討しました。グラデーションになっている色の表現など、点図には向かない図については、試作して触読校正者に確認したうえで、立体イメージプリンター EasyTactix(イージータクティクス)で印刷する触図に決めました。

4.2 執筆者・編集者との打ち合わせ
複雑な図や線が混在している図は、執筆者と打ち合わせをして作りました。実際に執筆者が試作図を触ることで触図の可能性を把握してもらい、伝えたい部分を分かりやすく触図化しました。例をいくつか紹介します。

・線が混在している図の単純化、三次元で表現された図の二次元的な表現の方法についての検討
・ 複雑な図のデフォルメ化
・ 複数枚に分割

4.3 触読による校正
作成した図を触読し、文字校正だけでなく、執筆者の意図が反映できているかを確認しました。

5. 点字印刷・製本
点字プリンターで本文を印刷し、触図は立体イメージプリンターで印刷します。最後にそれらを製本して完成させました。

点字、触図の電子ファイルの入手方法
本書の点字本は、原本の文字部分が掲載された点字版と、原本の図の部分が掲載された触図版で構成されています。点字版、触図版の電子ファイルは、視覚障害のある方や、その他の関心のある方に向けて、無料で提供されています。
公開しているのは、高エネルギー加速器研究機構のリポジトリ、筑波技術大学のリポジトリ、国立国会図書館の視覚障害者等用データ送信サービスですが、次のURLにアクセスしていただくと、それら入手先の情報を得ることができます。
https://www2.kek.jp/ipns/ja/braillebook_project/

入手した触図の印刷方法
触図版の電子ファイルは、上記のURLから、立体コピーによる印刷が可能なPDF形式のファイルで入手できます。
立体コピーを印刷する製品には、Partner Vision bizhub C250 i(コニカミノルタ株式会社)、Pピアフ IAF (ケージーエス株式会社)、 EasyTactix(SINKA株式会社)などがあり、価格は20万~ 190万円程度です。また、専用の立体コピーの用紙は、1枚あたり70 ~ 130円程度です。
触図を印刷する環境がない方には、筑波技術大学から触図版の貸し出しを行っていますので、お問い合わせください。

問い合わせ先:order@ntut-braille-net.org
(筑波技術大学 障害者高等教育研究支援センター)

本書の点字版作成は、以下のメンバーで行いました。(五十音順)
▪️筑波技術大学:金堀利洋、田中仁、納田かがり、野澤しげみ、宮城愛美
▪️つくばステッキの会:横田弘美

 

 

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