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第16回サマーチャレンジを3年ぶりに完全対面で開催
2022年12月12日
2022年8月18日から26日にかけて、第16回サマーチャレンジがオンラインで3年振りに完全対面で開催され、全国から56名が参加しました。サマーチャレンジとは、基礎科学を担う若手を育てることを目的とした科学技術体験型スクールです。大学3年生を主な対象として、KEKが主催、高エネルギー物理学研究者会議と原子核談話会が共催で実施しています。主なプログラムは最前線で活躍する研究者による講義と素粒子・原子核の本格的な演習です。この他に、KEKつくばキャンパスと東海キャンパス(J-PARC)の施設見学ツアーなども実施しています。
今年度は、感染症対策を徹底し、講義と恒例の施設見学ツアー、キャリアビルディング(詳細は後述をご覧ください)を含む3年振りの完全対面形式での開催でした。
初日は、第一線で活躍する研究者による「素粒子」に関する講義があり、午後にはつくばキャンパスの見学がありました。講義や施設見学では、基本事項の解説から始まり、大学院で学ぶようなハイレベルな内容まで出てきましたが、 参加者からは毎時間予定時間を延長するほど多くの質問が挙がり、講師と活発に議論していました。
2日目は、2015年にノーベル物理学賞を受賞された梶田 隆章氏(東京大学宇宙線研究所)による特別講義から始まりました。梶田教授の講義ではご自身の学生時代からの経験を交え、カミオカンデ建設時から現在に至るまでのさまざまなニュートリノ研究について、わかりやすくお話しいただきました。
特別講義の後は「放射線」に関する講義が続き、午後は10班に分かれ最終日の発表に向けた演習が始まりました。
今年度の演習題目は以下の通りでした。
- 第1 班 反粒子を捕まえよう
~最軽量原子ポジトロニウムの崩壊観測実験~ - 第2 班 ワイヤー1本で素粒子をとらえる
~素粒子・原子核実験の心臓部分「ワイヤーチェンバー」を作ろう~ - 第3 班 先進加速器を体験しよう
~実験と電磁波シミュレーターで体験する先進加速器~ - 第4 班 磁気スペクトログラフ
~ 磁場の中での荷電粒子の振る舞い ~ - 第5 班 光子を実感する
- 第6 班 量子干渉実験
~光を使って量子のふるまいを知る~ - 第7 班 宇宙線観察で学ぶ粒子の崩壊とスピン回転
- 第8 班 放射線検出器を作ろう
~IoT 技術と物理実験~ - 第9 班 自然放射線を理解しよう
~GM カウンターの製作から線量測定まで~ - 第10 班 宇宙線ミューオンを捕まえて素粒子の対称性を調べよう
夕方には参加学生の親睦を促進する学生交流会がありました。
3日目の午前中は「原子核」に関する講義があり、午後は各班に分かれての演習、そして夕方は恒例のキャリアビルディングがありました。
キャリアビルディングは、様々な分野で活躍中の研究者や社会人をパネラーに迎え、パネラーとの対話から進路を考えるきっかけ作りを目的としたプログラムです。パネラー陣によるキャリア形成をテーマとしたパネルディスカッションの後、パネラーを中心とした座談会形式に移り、研究者に進むまでの道のりや研究テーマを選んだきっかけなどを徹底的に語っていただきました。将来の参考となるパネラーの話に参加者一同は真剣に聞き入っていました。
4日目は午前中に「宇宙」に関する講義と午後の演習があり、5日目は終日かけて東海キャンパスに見学に行きました。
第6日目の午前は「加速器」と「統計と誤差」に関する講義を受け、午後は演習。第7日目は終日演習、第8日目は午前中に演習、午後は発表の準備を行いました。
そして、いよいよ最終日の第9日目に全演習班が演習の結果を発表し、修了式に至りました。
3年振りの完全対面による開催を終えて、第16回校長の西口 創(はじめ) 准教授(KEK 素粒子原子核研究所)は「世界最先端の研究現場での合宿形式の実験演習がKEKサマーチャレンジの醍醐味です。その意味でも、対面での実施を心待ちにしていましたが、この度、3年ぶりに対面での開催が実現出来ました。感染症対策などの準備は大変ではありましたが、参加学生がイキイキと実験演習に取り組む姿や、真剣な表情で演習班メンバーと議論する様子を見て、対面での開催が叶って良かったと心から思いました。」とコメントしました。