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国際研究会MNT2024を開催しました~多核子移行による未知の原子核探索~

国際研究会「MNT2024 – Exploring the heavy exotic neutron-rich nuclides via multinucleon transfer reactions (多核子移行反応による重い未知中性子過剰原子核の探索)– 」が、7月2日から5日にかけて理化学研究所で開催されました。 KEK素粒子原子核研究所・和光原子核科学センター、ヨーク大学(イギリス)、理化学研究所・仁科加速器科学研究センター、日本原子力研究開発機構・先端基礎研究センターの共催です。この研究会は、多核子移行反応を使用した中性子過剰核合成によって拓かれる新たな学術研究に焦点を当てています。

 

宇宙のさまざまな場所で起こる元素合成過程によって身の回りの元素は創られたと考えられています。その中でも、高温で中性子の数が多い場所で、原子核が多数の中性子の吸収とベータ崩壊を繰り返してウランまでの元素を合成したとされる過程を「速い中性子捕獲過程(r過程)」と呼びます。r過程は、自然に存在する安定な原子核に比べて中性子がかなり多い原子核(中性子過剰核)を合成しながら進行します。r過程の謎を解明するためには中性子過剰核の研究が必要であり、1つの原子核を2つの原子核に分裂させる核分裂反応や、2つの原子核をぶつけて壊す核破砕反応による中性子過剰核の合成を用いた実験研究が世界的に行われてきました。ところが、r過程の解明で鍵となる中性子の数が126個の中性子過剰核や、それよりも重いアクチノイド領域の中性子過剰核は従来の手法では合成が困難でした。

和光原子核科学センターは、多核子移行反応に着目しました。多核子移行反応とは、2つの原子核の間で陽子と中性子を複数移行させて別の原子核を合成する反応のことです。そして、キセノンの重イオンビームと白金の標的によって、中性子数126近傍の中性子過剰核が従来の手法に比べて多く合成できることを世界でいち早く実証しました。現在では、多核子移行反応に特化した実験施設の建設が各国で進められ、理論的研究も盛んに行われています。

 

今回の研究会には、関連分野の第一人者ら約70名が世界中から参加し、豊富な知識と経験に基づいた講演が行われました。この分野における知見の共有と新しいアイデアの模索を通じて実効的なソリューションを探索する基盤を築くことを目指し、本研究会をシリーズとして今後も継続して開催していくこととしました。このような活動が、多核子移行反応を用いてr過程の謎を解明するための大きな力になると考えています。

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