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人類未踏のエネルギーでLHC実験が再開した瞬間のATLAS検出器のイベントディスプレイ。図の左右からそれぞれ飛んできた陽子の塊同士が検出器の中央で衝突すると、その時の素粒子反応でたくさんの粒子が飛び出す。図中の線やブロックは、飛び出した粒子が通過した検出器内部の場所を表す

人類未踏のエネルギーでLHC実験が再開した瞬間のATLAS検出器のイベントディスプレイ。図の左右からそれぞれ飛んできた陽子の塊同士が検出器の中央で衝突すると、その時の素粒子反応でたくさんの粒子が飛び出す。図中の線やブロックは、飛び出した粒子が通過した検出器内部の場所を表す

2015年6月3日、CERNのLHC実験で物理解析用データの取得が再開されました。

LHC加速器はスイス・ジュネーブ郊外の欧州原子核研究機関(CERN)にある世界で最も強力な陽子陽子衝突型加速器(陽子と陽子を正面衝突させるタイプの加速器)です。 この加速器を使ったLHC実験は2009年に開始され、2012年夏にはLHC実験グループの中のATLASおよびCMS研究グループが、素粒子の質量の起源と深い関係のある「ヒッグス粒子」を発見しました。

2013年2月からはLHC実験計画第二期(以下LHC Run2)に向けた改修のためその運転は一時停止。 それからおよそ2年間にわたるシャットダウンと数ヶ月間におよぶ運転再開のための立ち上げ作業を経て、現地時間 6月3日10時40分(日本時間 同日17時40分)、遂に13TeVという前人未到のエネルギーでビームを定常的に衝突させることに成功。 「LHC Run2」が本格的に始動したことにより、これからの新たな発見に向けた道が拓かれました。

LHC Run2 では、素粒子の標準理論のさらなる探索と標準理論の枠組みを超える新しい物理現象の確証を掴むことを目指します。 これらの現象を観測・理解できれば、現在の宇宙の約4分の1を占めていると考えられている「ダークマター」や、反物質に比べて物質が多く存在しているという「物質優勢宇宙の起源」など、私たちの存在理由に関する謎の解明につながる可能性があるとされています。

LHC実験はこれから3年間、24時間体制で運転を続けます。 地球で最も宇宙のはじまりに近い加速器は、これからどんな結果をもたらしてくれるのでしょうか。 今後数年は運転を再開したLHC実験から目が離せません。

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