素核研・短寿命核実験グループの宮武
宮武教授は、KEKが埼玉県和光市の理研・仁科加速器センターに設置した「和光原子核科学センター」のセンター長を務め、白金や金などの重い元素がどのような天体環境で合成されたのかを調べるブロジェクトを進めています。
使われている測定器は、元素選択型質量分離装置(KISS)と呼ばれ、サイクロトロン加速器(RRC)で加速されたキセノン同位体、136Xeやウラン同位体238Uのビームを、プラチナ同位体198Ptの標的に衝突させ、中性子を126個持つタングステン同位体200W,オスミウム同位体202Osなどの短寿命核を生成。これらをレーザーで分離し、寿命の長さや質量を測定することで、白金や金などの重い元素が生成させる環境条件に迫ることができるといいます。
つくば駅に隣接するショッピングセンター「BiViつくば」2階にある「つくば総合インフォメーションセンター」で開かれたサイエンスカフェには、約20人の中学校生、高校生などの市民が出席しました。
宮武教授は、地球上にある元素について、「金や白金も含め、鉄より重い元素は星の一生とともにできたはず。しかし、通常の星では鉄まで合成するのが限度で、原子核に中性子を吸わせたとしてもすぐに崩壊してしまうため、核図表上で連続しているビスマスまでしか作れない」と説明しました。また、超新星爆発などのデータをもとに作成した、中性子の速い取り込みとベータ崩壊により、超重元素が核図表上に生成していくシミュレーション映像を示すと、中学生らから「すごい」と感嘆の声が漏れました。さらに、10月中旬に発表されて話題になった中性子連星の衝突・合体からの重力波観測にも触れ、「シミュレーション結果によると、ランタンからルテニウムまでのランタノイドまでは出来ているようだが、金や白金までいけるかどうかはまだ不明」とコメント。KISS実験の装置についても紹介し、「天文学者、宇宙物理学者と緊密に連携を取りながら、金・白金を作り上げた故郷である天体の温度や中性子の数などを探っていきたい」と語りました。
会場からは「中性子星が合体した後は何になるのか」「銀河と銀河が衝突して、重い元素ができることはないのか」「KISS測定器でできた他の元素はどうなるのか」など、たくさんの質問が出ていました。
同グループは次週以降も引き続き、同じ場所で行われるKEKサイエンスカフェに出演する予定です。
渡邊裕・素粒子原子核研究所講師
「どうやって未知原子核を生成・分離・観測するのか?(仮題)」和田道治・素粒子原子核研究所教授
「どうやって未知原子核の質量を測るのか?(仮題)」
関連リンク
- KEK KEK公式ページ/短寿命核を用いた核物理研究
- KEK/短寿命核R&Dグループ
- RIKEN 理研公式ページ/理研仁科センター低速RIビーム生成装置開発チーム
- IPNS素粒子原子核研究所/短寿命核実験グループ・9月の活動報告
- IPNS【特集】金や白金の起源となった天体環境を探索する〜和光原子核科学センター・短寿命核実験グループの取り組み