素粒子原子核研究所所長、J-PARCセンター副センター長を務め、加速器長基線ニュートリノ振動実験の先駆者であった高エネルギー加速器研究機構の西川公一郎名誉教授が、闘病の末、まことに残念ながら2018年11月にお亡くなりになられました。謹んでご冥福をお祈りいたします。
素粒子原子核研究所長のメッセージ -西川公一郎元所長のご逝去にあたって-
大変残念な訃報に接することとなり、悲しみにたえません。
西川公一郎氏は、東京大学小柴研で修士号、米国ノースウエスタン大学で博士号を取得後、米国シカゴ大学でフェルミラボでの中性K中間子のCP対称性の破れを測定する実験の最初期に携われました。日本でニュートリノ振動実験を行うため1987年に東大原子核研究所(当時)の助教授に着任し、高エネルギーの陽子加速器でニュートリノビームを生成して数百キロメートル先の大型検出器に打ち込む「長基線(LBL)ニュートリノ振動実験」の提唱者となりました。
カミオカンデ測定器で観測された”大気ニュートリノ異常”や“太陽ニュートリノ欠損”によりLBL実験の重要性が広く認識されるようになり、KEKの12GeV陽子加速器(当時)からスーパーカミオカンデ測定器へニュートリノビームを打ち込む世界初のLBL実験:K2K実験が実現しました。西川氏はK2K実験の提案者であり責任者を務めるとともに、1997年にKEK素粒子原子核研究所(素核研)教授、1999年からは京都大学理学研究科教授として研究とともに教育や後進の育成も担われました。2006年にはKEK素核研に戻られて第三研究系主幹さらに2009年からは素核研所長を務められました。西川氏は、J-PARCでのLBL実験かつ大規模国際共同研究であるT2K実験の責任者としてニュートリノ研究を主導するとともに、日本の素粒子原子核研究全体の推進を担われました。2006年にJ-PARCセンターが立ち上がってからは素粒子原子核ディビジョン長、さらに副センター長としてJ-PARCの研究プログラム、さらに東日本大震災からの復旧に大きな貢献をされました。
西川氏の研究は高く評価され、国内では仁科記念賞(2005年)、国際的にはブレークスルー賞(2016年)やブルーノ・ポンテコルボ賞(2016年)を受賞されています。
故人のご冥福をお祈り申し上げるとともに、ご遺族の皆様に心よりお悔やみ申し上げます。
高エネルギー加速器研究機構 素粒子原子核研究所長
徳宿克夫