科学実験イベント 探Q「目には見えない宇宙線は何でもお見通し!— 最先端の素粒子・宇宙物理学を体験しよう —」が2019年10月5日、長野県飯田市にある産業振興と人材育成の拠点 エス・バードにて開催されました。
探Qとは、宇宙線観測に興味のある全国の中学・高校・高専の学生に宇宙線検出器を用いた実験を体験してもらうと共に、全国の学生のネットワークを形成して共同で研究を行うことを目的とした活動です。探Qの前身にはQuarknet Japan(クォークネットジャパン)という国内の中学・高校と大学・研究機関によって構成された宇宙線計測・放射線計測コラボレーション(田中 香津生 氏https://kaduo.jp/の発言より引用)の活動があります。探Qは大学・研究機関側も中学・高校・高専側も、より幅広いネットワークを形成し、互いに協力して研究活動を進める事を狙いとして、KEKや東北大学サイクロトロン・ラジオアイソトープセンターの研究者らで発足されました。
探Q初の活動となる本イベントは、総合研究大学院大学主催、公益財団法人 南信州・飯田産業センター、飯田市共催のもと開催されました。イベントは2部に分かれ、第1部では、テレスコープアレイ(TA)プロジェクトの福島 正己 東京大学名誉教授によるセミナーが行われました。福島教授は「超高エネルギー宇宙線の謎を解く」というタイトルで、放射線・宇宙線発見の歴史や宇宙線を構成する元素といった話から、宇宙線の現在未解決の謎やTA実験など世界最先端の宇宙線研究の話題に関しても検出器の写真などを踏まえつつ講義しました。会場では、子供に説明しながら福島教授の話に耳を傾ける親子の姿も見られました。
第2部では、「本格実験!!宇宙線をつかまえてみよう!」というタイトルのもと、探Qスタッフが自作した宇宙線検出器を用いて実際に宇宙線を測定する体験講座が行われました。参加者は2チームに分かれ、宇宙から降り注ぐ宇宙線が大気と相互作用して生じる「二次宇宙線」の頻度が、地球に入射する角度によりどのように異なるのか計測しました。加えて、Quarknet Japanで宇宙線検出の研究を進めてきた広尾学園高等学校の生徒らによる活動紹介も行われました。
参加者からは「今回実験を経験して、実験は厳密にやらなければならず大変だと分かりました。色々な人と実験する中で様々な意見が出て、学ぶ事が多かったです。」、「背景知識を全く知りませんでしたが、それでも興味が湧き、楽しいと感じられました。」といった感想が寄せられました。
広尾学園高等学校の生徒は、「実際にTA実験をしている人の話を聞くことができ、自分の知識が一層深まった感じがしました。」、「つい最近知った知識も研究者の話の中で出てきて、自分の中で繋がった感じがして面白いと思いました。」と本日のイベントを振り返っていました。
Quarknet Japan立ち上げ時から中高生向け宇宙線検出ワークショップを開催してきた東北大学サイクロトロン・ラジオアイソトープセンターの田中 香津生 助教は「元々3年ほど前からこのような活動を始め、様々な学校を巻き込むことに力を入れてきました。今回初めて探Qという形で宇宙線検出ワークショップを開催しましたが、これから探Qの活動を広げることができるのではないかという実感を得ることができました。」と探Qの初イベント成功を噛み締めていました。
探Qスタッフの一人である上野 一樹 KEK素粒子原子核研究所 助教は、「皆さん色んな意見を出し合っており、こちらの狙った以上のアイディアが出てきました。高校生の皆さんだけでなく飯田市の方のご協力もあり、更に様々なアイディアをいただくこともできたので、今後もこのような活動を続けて広げていけたらと思います。」と今後に期待を寄せていました。