KEK理論センターの夏梅誠 研究機関講師がアメリカ物理学会(American Physical Society, APS)から2022年の卓越した査読者 (Outstanding Referee) に選出されました。APSは”Physical Review Letters”、”Physical Review”などの著名な学術雑誌を発行しており、本制度はこれらの雑誌の査読者を表彰するものです。夏梅講師は素粒子論、特に超弦理論を専門に研究しています。
一般的に学術論文が出版されるためには、査読というシステムで審査を合格する必要があります。査読とは、その論文の第三者である匿名の研究者が内容を検証し、必要に応じてコメントをした上で、論文が学術的に信頼できるものかを評価するシステムです。査読は研究者によるボランティアで行われています。
APSの卓越した査読者は、査読の数、質、返信の早さが評価され授与されます。毎年物理の全分野で世界中の約82,000名の査読者の中から約150名が表彰されており、今年は146名が卓越した査読者に選ばれました。中でも日本の研究機関所属で今年選ばれた人数は、夏梅講師を含め4名のみです(参考:https://journals.aps.org/OutstandingReferees )。
夏梅講師は卓越した査読者に選ばれたことに対し、「私にとってAPSは古巣のような所です。大学院ではアメリカのテキサス大学に留学していたので、APSが最初に所属した学会でした。そのようなゆかりのある学会から今回の栄誉をいただいて大変嬉しく、光栄に思います。」とコメントしました。
さらに、「APSの査読はなるべく引き受けてきましたが、やはり大変ではありました。査読は業績に入らず表に見える活動ではありませんし、査読コメントを著者の方に納得していただくまでに苦労することもあります。ですが、微力ながらジャーナルの質を向上する助けになればと思い、できるだけ引き受けています。頻繁に査読の依頼が届くので、おそらくAPSの編集部には自分の査読や研究が評価されているのだろうなと前向きに捉えています。」と、査読の大変さや信条についても聞かせてくれました。