スイス・ジュネーブの郊外で、フランスとの国境に位置するCERN(欧州原子力機関)のLHC(大型ハドロン衝突型加速器)において、測定器ATLASでの実験に参加するグループが、2月の活動報告を行いました。報告では、LHCの2017年の運転状況及び測定器の改良、さらに新たに判明した物理ハイライトなどについて説明しています。
運転状況としては、LHCが重心系エネルギー13TeVで陽子・陽子の衝突実験を順調に続け、加速器としての性能を示すルミノシティ(衝突頻度)が、設計値を大きく上回り、2×1034cm-1s-1を超え、KEKB加速器の世界最高記録(2.11×1034cm-1s-1)に迫っていることなどを報告。また、そうした状況でもATLAS測定器の性能を引き出すため、KEKなどの日本グループが中心となってPixel検出器のデータ収集システムをアップグレードし、エラー頻度を大幅に改善したことについても詳しく説明しています。
2017年には、LHCで期待されていた超対称性粒子など未知の重粒子探索の最新結果が公表されなかったものの、物理ハイライトとして、ビッグスボソンがボトムクォークと反ボトムクォークに崩壊する事象の探索と、Wボソンの質量測定の結果について報告。前者では、ボトムクォークジェット対から再構成した不変質量の分布中で、ゲージボソンの崩壊によるピークの右側に、ヒッグスボソンからの崩壊と考えられる過剰な部分(図4で赤く塗られた部分)があり、統計的有意度が3.5σと見積もられることなどを指摘しています。
また、今後さらに観測事象数を増やし、測定精度を上げる一方、未知の重粒子の探索に力を入れていく方針を述べています。
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