素核研のストレンジネス核物理グループが、5月の活動報告を行いました。報告書では、J-PARCハドロン実験施設で2015年6月に行われた実験の成果で、2018年3月末に物理学の専門誌「Physical Review Letters」に掲載され、プレスリリースした話題について詳しく紹介しています。
同グループは東北大などの研究チームとともに、アップクォーク(u)、ダウンクォーク(d)でできている陽子・中性子のほかに、ストレンジネスクォーク(s)を含むラムダ粒子などのハイペロンを構成要素にもつ原子核(ハイパー核)を生成し、そのエネルギーや構造を詳細に測定することにより、原子核を作り上げている核力やハイペロンを含んだ原子核物理の理解を目指しています。
実験では、重いハイパー核であるフッ素19ラムダハイパー核(19ΛF)の励起状態を生成し、その脱励起過程をガンマ線分光により精密に測定し、フッ素19ラムダハイパー核の励起準位構造の一部が、理論計算の予測とよく一致していることを明らかにしました。
大質量の恒星の超新星爆発で生まれるという中性子星ですが、その内部は強い重力で原子核を圧縮したような物質でできており、これまでのハイパー核の研究結果から、ラムダ粒子が存在するとされています。一方、中性子星内部にラムダ粒子が存在すると、近年見つかった太陽の2倍の重さの中性子星が、自らの重みを支えられず、ブラックホールになってしまうという矛盾が生じます。しかし、高密度の原子核中でのラムダ粒子の振舞いはまだよくわかっておらず、今回のような研究を進めれば、恒星が爆発後に中性子星になるか、ブラッックホールになるか、その分かれ目を知ることができると考えられています。
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