素核研ミューオングループが、2018年12月の活動報告を行いました。
標準理論の枠内では、第2世代のレプトンである(正)ミューオンは通常、電子、反μニュートリノ、電子ニュートリノに崩壊します(μ+→e+νμνe)。ところが、標準理論を超えたSUSYなどの未知の素粒子が存在ると、ミューオンがガンマ線を放出しながら電子に変化するような反応(μ+→e+γ)が生じるかもしれません。あるいはこの反応が(負ミューオンで)生じる際に、物質の影響下で起こったとするとミューオンが電子に転換する事象が起こるかもしれません(ミューオン電子(μ-e)転換事象)。
ミューオングループは上記のようなミューオンが崩壊(反応)して(陽)電子になる反応を捉え、標準理論では説明できない新物理の証拠を掴もうと、MEG実験と COMET実験を推進しています。
MEG実験では大量の正ミューオンを薄い標的に停止させ、μ+→e+γ崩壊の反応を捉えて、この反応が生じる確率を求めようとしてきました。現在は、μ+→e+γ崩壊の反応が起こる分岐比の上限値を4.2✕10-13(90%信頼度)と定めており、感度を10倍近く向上したMEG II実験を始めようとしています。
COMET実験は17か国が参加する国際共同実験で、μ-e転換事象を捉えることを目標としています。現在は陽子ビームラインの建設を進めながら、低温センター、素核研低温グループと協力の下、超伝導ソレノイド磁石を製作しています。実験用の大量のミューオンを生成する際にπ中間子が必要となりますが、この磁石は生成したπ中間子を集めるためのレンズの役割を果たします。加えて、陽子ビームの計測に必要な高速応答可能かつ高精度な検出器と測定方法の開発も進めています。この測定では、陽子ビームパルスからの陽子の漏れ出し率が10-10以下を満たすことを確認しようとしています。COMET実験では、2018年にはカザフスタンのInstitute of Nuclear Physicsが新たにコラボレーションに加わりました。
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