素核研ILCグループが2019年2月の活動報告を行いました。
ILC計画は、宇宙の全てを1つの式で表すことのできる、究極の統一理論の完成を目標にした実験計画です。電子と陽電子を全長約20kmの線型加速器で衝突させ、その反応を追うことで、物質に質量を与える粒子であるヒッグス粒子がなぜ宇宙に満たされたのかを解明することを目標としています。その理由によって、1. 「宇宙には通常の4次元(=空間3次元+時間1次元)以外の私達の知らない新たな次元があるのか」、2. 「ヒッグス粒子は実はこれ以上分けることのできない素粒子ではなく、いくつかの未知の粒子で構成されているのか」、3. 「宇宙は一つではなく無数に存在するのか」、究極の統一理論への道筋、私達人類が将来解明すべき世界が変わります。
ILC計画に関しては、第1回学術会議の結果を踏まえ、2014年から有識者会議により約4年間検討がなされてきました。2018年7月にその最終報告書とともに、文部科学省は日本学術会議に250 GeV ILC計画の学術的意義等の調査審議を依頼しました。2018年8月から12月にかけて行われた第2回学術会議の結果、学術会議はILC計画の学術的意義を認めつつも、国際経費分担や必要人員の確保等の課題を指摘し、総合所見で250 GeV ILC計画を日本に誘致することを現状では支持するには至らないとしました。
しかしながら、日本がILCをホストすることへの関心の表明を行い、正式な国際協議を始めることは学術会議も否定していません。そこでKEKはこの学術会議の所見に対するKEKの見解を直ちに公表し、政府から前向きな声明がタイムリーに出されることを求めました。今後数年の素粒子物理学の戦略を議論する「欧州素粒子物理戦略」の次の更新プロセスでILC計画推進の支持を継続するか否かの判断を下すには、遅くとも2019年3月初めのICFA/LCB(ICFA; 国際将来加速器委員会、LCB: リニアコライダー国際推進委員会)の委員会開催時点までに日本政府からの意思表明があることが条件なのです。
ILCグループは、日本政府からの明確な意思表明があり、欧州戦略でILC計画が前向きに議論され、諸外国との具体的な国際経費分担に関する国際協議が進むことを目指して、測定器開発や衝突実験用の施設・設備の土木的な検討も含め推進活動に精力的に取り組んでいます。
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