KEK理論センターが2019年4月の活動報告を行いました。
理論センターでは大きく分けて素粒子、原子核、宇宙、数値計算の理論研究をしています。これら4つの分野の研究者が、同じ場所で分野の垣根を超えて日々一緒に研究に取り組んでいます。さらに、KEKではSuperKEKB加速器を用いたBelle II実験や、J-PARC加速器を使用してクォークやレプトン(これらをフレーバーという)の性質を調べる実験など多くの実験プロジェクトが進められています。そのため、理論センターはKEKで実験プロジェクトが進められていることを活かし、実験グループと綿密に連携を取っています。理論研究では関連実験の最新データを利用し、さらに世界最先端の実験を行う上で探るターゲットを明らかにするために、理論センターと各実験グループは互いにとって非常に重要な存在なのです。この様な研究スタイルは素核研の理論センターの大きな特徴となっています。
今回の活動報告では、Belle II実験とミューオンの磁気の強さを表す「異常磁気能率」の精密測定の2種の実験に関連した理論研究について報告されています。
Belle II実験において、理論と実験の連携・協力体制である「Belle II Theory Interface Platform (B2TiP)」プロジェクトを推進しています。2018年には、Belle II実験で期待される精度とその意義、新物理探索への感度に関する2014年以降のデータの詳細な解析結果をまとめたレポートが発表されました。
異常磁気能率の精密測定研究においては、理論センターに所属する研究員を含む研究グループが、最新の実験データを用いた理論値と実験値(注)が3.7シグマの有意さで一致しないことを明らかにしました。これまでの理論値の誤差を約30%小さくしたこの研究結果は、現在では世界中でミューオン異常磁気能率における標準理論の予言値の基準として用いられています。この研究活動はB2TiPプロジェクトにも受け継がれています。さらに、現在KEKでも計画されているミューオン異常磁気能率の精密測定実験を進める上でも鍵となります。
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理論センター
(注)…アメリカのブルックヘブン国際研究所のE821実験で2006年に得られた実験結果