活動報告

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欧州原子核機構(CERN)の大型ハドロン衝突型加速器(LHC)でのATLAS実験に参加しているKEK素粒子原子核研究所のグループが、2019年6月の活動報告を行いました。

ATLAS実験とは、スイス・ジュネーブ近郊にあるCERNのLHCで行われている加速器実験の一つで、KEKを含めた国内外合わせて約180の研究機関からの約3000人の研究者が共同で行なっています。世界最高の衝突エネルギーで陽子と陽子を衝突させ、その反応を観測することで、素粒子の標準理論の精密検証や新粒子の探索が行なわれています。

LHCは2018年12月に4年かけて行われた重心系エネルギー13TeVでの陽子・陽子衝突(Run2)を予定通り終了しました。現在、KEK ATLASグループはRun2で収集した全データの物理解析と、2021年から始まるRun3に向けた検出器や回路のアップグレード等の作業を行なっています。

Run2の物理解析の最初の結果として、電子用陽電子対とミューオン対の不変質量分布が、バックグラウンドのみを仮定した状態と実験データで矛盾しないことを明らかにし、5 TeVまでの共鳴状態の存在を棄却しました。

2021年に開始予定のRun3は2023年まで続きますが、2026年からは、LHCは加速器の性能を大幅に改善した高輝度LHC (HL-LHC)の運転開始を予定しています。ATLAS実験では、現在Run3に向けた準備に加えてHL-LHCのための検出器アップグレードも進めています。具体的には、内部飛跡検出器を刷新して直径60cm、長さ6mの史上最大のシリコン飛跡検出器に入れ替える予定です。また、ミューオン検出器も最先端の技術を用いて処理速度を大幅に向上する予定です。現在は、2つの検出器共に量産に向けた準備を進めています。

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ATLASグループ