KEK短寿命核グループが2019年10月の活動報告を行いました。短寿命核グループは、埼玉県和光市の理化学研究所内にKEKが設置した和光原子核科学センターで、金や白金といった重元素が天体の中で合成される過程を調べて起源天体を探る研究をしています。今回は物理と装置開発の成果が中心に報告されています。
物理成果に関しては、2017年に行われた元素選択型質量分離装置(KISS)実験データを元にして、オスミウム(Os)の新たなアイソマー状態(通常よりも原子核が長寿命で励起状態にある状態)が同定されました。これは原子核の寿命予測を研究する際重要となります。同時に、197, 198Osのオスミウム同位体のデータも加えてオスミウムの同位体の寿命を調べたところ、どの理論模型とも一致しないことが明らかになりました。高精度での寿命予測のため、さらなる系統的な測定をする必要があります。
様々な機関と共同で行われている装置開発に関しては前回の活動報告からさらに進み、現在は実験の準備がおおよそ完了してきました。例えば、KISSのイオン化室部分は「In-gas-jetレーザーイオン化法」という新手法に順調に改良されており、来年早々実験に投入予定です。ガス充填型反跳イオン分析器(GARIS-II)に設置された多重反射型飛行時間測定式質量測定器(MRTOF)システムも開発・改良が進んでいます。新たに製作したα-TOF検出器は、超重元素同位体の寿命予測の鍵となる飛行時間(TOF)を検出すると同時に、それがα粒子に崩壊するエネルギーと崩壊のタイミングも測定できるようになりました。2019年度より新たに始まった理研仁科センターとの低速RIビーム供給施設開発では、Zero-Degree Spectrometer (ZDS)の焦点面にMRTOFシステムを新たに建設し始めました。
詳しくはこちらをどうぞ。