活動報告

所要時間:約2分

ストレンジネス核物理グループが2019年11月の活動報告を行いました。

素核研ストレンジネス核物理グループでは、KEK東海キャンパスにある大型陽子加速器施設(J-PARC)のハドロン実験施設で原子核実験を行っています。前回の活動報告記載のJ-PARC E07実験実施後、現在はΣ陽子散乱実験(J-PARC E40実験)を遂行中です。

原子核は陽子や中性子が核力という力で結びついて形成されますが、陽子や中性子同士の距離が近付き過ぎると却って強い斥力が働くことが分かっています。しかしながら、この斥力の起源は未だ解明されていません。そこでE40実験では、この斥力の起源を実験的に調べるためにΣ+粒子(アップクォーク2つとストレンジネスクォーク1つから成る粒子)および Σ-粒子(ダウンクォーク2つとストレンジネスクォーク1つから成る粒子)をJ-PARCの大強度ビームで大量に生成し、陽子と衝突させてその散乱の測定をしています。

実験は大きく分けて2段階で構成されており、初めに標的の前後に設置したスペクトロメータでπ中間子とK中間子の運動量を測り、そこからΣ粒子の質量を求めることでΣ粒子の生成を確認します。次に、本実験のために新たに開発された陽子検出器群CATCHによってΣ粒子と陽子の散乱の様子を測定します。

ここで、従来のΣ粒子と陽子の散乱実験ではカメラで画像を撮っていたため、大量のデータを取得するのが困難な上、粒子の生成・散乱標的に使用する炭素の原子核とΣ粒子の反応から生じるバックグラウンドが問題となっていました。E40実験では、シンチレーティングファイバーを使用することで検出器の信号のみからデータが解析可能になり、検出速度が圧倒的に速くなりました。さらに標的に液体水素を用いることで炭素原子核によるバックグラウンドを除去することが可能となり、大量のデータを取得する効率が劇的に向上しました。

これまでの研究により、E40実験における検出器やデータ収集等の正常な動作と測定手法の正当性が確認されました。今後は来年実施予定のビームタイムにおいてデータ取集を完了し、解析を進める予定です。

詳しくはこちらをどうぞ。

ストレンジネス核物理グループ