一次陽子ビームグループが2019年12月の活動報告を行いました。
一次陽子ビームグループはJ-PARC(大強度陽子加速器施設)にあるハドロン実験施設の建設・運営・機能強化の中心を担っているグループです。J-PARCではリニアック、3GeVシンクロトロンの2つの加速器を経て加速した陽子をさらに主リングで30GeVまで加速し、一次陽子ビームを生成します。生成された一次陽子ビームはハドロン実験施設で二次粒子生成標的に照射され、そこで生じたパイ中間子やK中間子が複数のビームラインに導かれて様々な実験が行われています。
前回の活動報告に引き続き、高運動量(high-p)ビームラインとhigh-p実験エリアの建設が進んでいます。high-pビームラインの目的は2つあります。1つ目は、high-p実験エリアでの実験のために、比較的弱い強度である109-1010 ppp(particles per pulse、強度を表す単位)程度の30GeVの1次陽子ビームを作り出すことです。2つ目は、南実験棟で行われるCOMET実験のために、8GeVの大強度ビームを作り出すことです。high-pビームラインでは大半の要素のインストールが完了し、high-p実験エリアでは、運動量を求める際に必要となる磁場の測定を実施し、鉛ガラス等の検出器が設置されました。
また、前回の活動報告では陽子ビーム強度約90kWに対応した次期の生成標的(金)も製作中であることが報告されていましたが、本年11月に旧標的との交換作業を予定通り完了しました。各種試験で問題がないことを確認し、来年2月にビームを使った調整を開始する予定です。
遅い取り出しビーム(注)による実験に関しては、本年2月から4月の期間で予定されていた運転を、3GeVシンクロトロンと主リング間のビームラインにある双極電磁石の不具合により途中で終了しました。未実施のデータ取得は来年2月〜3月に実施予定です。
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一次陽子ビームグループ
(注)遅い取り出しビーム:
J-PARC主リングで作られるビームには、遅い取り出しビームと速い取り出しビームの2種類があります。速い取り出しビームは、加速された陽子が主リングを一周する間(約5マイクロ秒)にそれらを一度に全て取り出してしまうビームです。一方遅い取り出しビームは、加速された陽子を、主リングを何周も周る間に約2秒の時間をかけて少しずつ取り出すビームです。