素核研ミューオン/LFVグループが2021年2月の活動報告を行いました。
標準理論の枠内で起こる通常のミューオンの崩壊とは異なり、標準理論を超えたSUSY粒子のような未知の素粒子が存在すると、ミューオンがガンマ線を放出しながら電子に崩壊するような反応(μ+→e+γ)やミューオンがニュートリノを出さずに電子に転換する事象(ミューオン電子(μ-e)転換事象)が起こるかもしれません。素核研ミューオン/LFVグループでは、このようなミューオンの稀な反応でレプトン世代数の保存が破れている現象(Lepton-Flavor Violation:LFV)を探索しています。ミューオン/LFVグループではMEG II実験、COMET実験に取り組んでおり、近年は特にCOMET実験を精力的に推進しています。
COMET実験は2段階に分けて実施予定で、ミューオンを輸送する超伝導電磁石のうち最初の90度の折曲がりまでを建設して物理計測を行うPhase I と、電磁石を延長して物理感度を上げるPhase IIを計画しています。さらにPhase I開始前には、陽子ビームを標的に照射した際に生成される二次粒子の生成の様子や陽子ビームの詳しい振る舞いを調べるためのPhase-αも実施予定です。現在は、長大な超電導ソレノイド磁石や検出器、モニターなどを低温センターや素核研低温グループ、J-PARC加速器グループ、素核研e-sysグループ、素核研メカEグループといったKEKの様々なグループと共同で開発しており、陽子ビームラインの建設を一次陽子ビームグループの協力を得て進めています。Phase Iではミューオン生成の標的にグラファイトを使用しますが、ミューオングループでは標的とその支持機構の設計も行っています。Phase-αではPhase Iより薄くしたグラファイト標的を使用しPhase Iでのミューオン収量を評価するためのデータを取得する予定です。
また、2021年4月にはJ-PARCハドロン実験ホールにて、COMET実験用に加速された陽子ビームが実験の求める条件(陽子の漏れ出し確率が10-11以下)を満たしているか、確認するための実験(J-PARC T78)を実施予定です。
詳しくはこちらをどうぞ。