活動報告

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ATLAS実験に参加するKEK ATLASグループが、2021年9月の活動報告を行いました。ATLAS実験とは、スイス・ジュネーブ近郊にある欧州原子核機構(CERN)の大型ハドロン衝突型加速器(LHC)で行われている加速器実験の一つで、KEKを含めた国内外合わせて約180の研究機関からの約3000人の研究者が共同で行なっています。世界最高の衝突エネルギーで陽子と陽子を衝突させ、その反応を観測することで、素粒子に質量を与えるヒッグス粒子の物理や新粒子の探索を行っています。

LHCは4年かけて行われた重心系エネルギー13 TeVでの陽子・陽子衝突(Run2)を2018年12月に予定通り終了しました。その後、ATLAS実験グループはRun2までに収集した全データの物理解析を進めており、千を超える学術論文を公表しました。さらに、2022年から開始予定のRun3、2027年に開始予定でLHC加速器の性能を大幅に改善した高輝度LHC (HL-LHC)実験に向けた検出器改良も進んでいます。

Run3に向けて、ミューオンを検出するためのNew Small Wheel (NSW)と呼ばれる検出器の片側が完成し、CERNのATLAS実験ホールに設置されました。もう片側の建設も進んでおり、今年の終わりに同じくATLAS実験ホールに設置予定です。高度な事象判別を行うハイレベルトリガーに関しては、これまで機械学習を用いてデータ収集の高度化を目指す(2020年12月の報告参照)など、改良に向けた様々な可能性を探ってきましたが、Run 3のトリガーに実際に導入するアルゴリズムの準備をKEK主導で行いました。ピクセル検出器についてはハードウェアとソフトウェアの両面から改良を加え、これまでの過酷な放射線環境の中で動いてきた検出器の運転パラメータを最適化し、実験を開始したときと同等の性能を維持できるようにしました。

HL-LHCに向けては、近年発達が目覚ましい高速通信技術や最先端の集積回路を活用したミューオントリガー開発をKEK中心で進めています。中でも、ミューオントリガーに使用するPSボードとJATHubボードは試作、動作検証試験、実験グループ内レビューが完了し、初期量産を開始しています。シリコン検出器の開発と量産もKEKが主導しています。より精細に粒子の飛跡情報を得るために、従来よりもストリップ長とピクセルサイズどちらも小さくしつつも、より大きな面積を観測する検出器の製作技術が要求されましたが、この要求性能を満たすことがわかり、開発から量産段階へ移り始めています。

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ATLASグループ

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