素核研ミューオン中性⼦グループが2021年10月の活動報告を行いました。素核研ミューオン中性⼦グループは、LFVグループ、ミューオンg-2/EDMグループ、UCNグループから構成されています。
LFVグループは、ミューオンを使ってレプトン世代数の保存則を破るような現象を探索しています。中でもミューオンがニュートリノを出さずに電子に転換する事象を探索するCOMET実験は、ミューオン生成のための陽子ビームの詳細を調べたり、陽子ビーム標的で生成される二次粒子を調べたりするためのエンジニアリングランを2022年度に予定しています。COMET実験では、背景事象低減のためパルス化された陽子ビームを使用しますが、パルスからの陽⼦の漏れ具合が10-10 以下である必要があります。これまでのJ-PARC加速器グループとの共同研究により、主リングへの陽子の⼊射⽅法の最適化が重要である事が判明していました。7月に行われた実験では、最適化された方法で入射・加速し実験室に取出された陽子ビームの漏れ具合が、実験の要求を満たしていることを確認しました。
ミューオンg-2/EDMグループは、ミューオンの磁気・電気双極⼦モーメントの精密測定を⾏う事で、標準理論を超える新物理の確実な証拠をつかもうとしています。現在は、2025年度の測定開始を⽬指して実験装置・設備の準備を進めています。実験設備はKE K物質構造科学研究所(物構研)と協力しながら、J-PARC 物質・生命科学実験施設(MLF)の建屋を⼀部拡張する形で整備しています。ミューオン冷却、加速、蓄積磁石への入射方法を含めた蓄積磁石の開発や、ミューオンが崩壊して生成される陽電子を捉えミューオンのスピンの向きを測定するための陽電⼦⾶跡検出器の開発を、物構研、加速器施設、機械⼯学センター、国内⼤学と共同で進めています。
UCNグループは、カナダTRIUMF研究所の国際共同実験TUCAN実験において、運動エネルギーが300neV以下の極低エネルギーの中性子、超冷中性子(UCN:Ultra-Cold Neutron)を⽤いて中性⼦の電気双極⼦モーメントの探索を行い、既存の物理法則にはないようなCP対称性(物質・反物質の対称性)の破れの起源を探ろうとしています。TUCAN実験の中で、素核研UCNグループが開発を担当している⼤型ヘリウム3冷凍機は、KEKでの冷却試験を終えた後、TRIUMF研究所に移送されました。今後は中性子を冷却するための最終熱交換器の開発を進め、2022年中のUCN 源の運転開始を⽬指しています。これ以外にも、UCNグループでは、UCNを輸送するためのガイドやスピン解析に用いる鉄薄膜の評価など、中性⼦EDM実験のための要素開発も⾏っています。
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ミューオン中性子グループ
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